訪問看護ステーション運営の鍵は管理者にあります。訪問看護ステーション運営に関わられた経験がある方は、高い能力を持つ管理者がいれば事業は好調となり、そうでなければ不調となることを実感されているでしょう。
そこで、訪問看護管理者の仕事の定義と必要な能力についてご説明し、訪問看護管理者育成の手法のヒントを2回にわたってお伝えします。
訪問看護ステーションの管理者は何をする人なのでしょうか?
訪問看護管理者の業務内容や責任の範囲は会社によって異なります。 共通しているのは『(看護)サービス品質の管理』と『人的資源管理(看護師らの労務管理や評価・育成等)』の2つです。
全国訪問看護事業協会をはじめ、様々な団体により訪問看護管理者研修が実施されています。多くの研修に共通する項目には、地域連携、マーケティング、品質管理、人事管理、人材育成、多職種連携、法律等があります。現状では管理者と経営者を兼任している事業所が多いためか、訪問看護管理者研修の中に経営戦略や会計管理、労務管理等の内容が含まれている場合もあります。
色々な会社の管理者さんに実際の仕事内容を聞いてみたところ、看護サービスの品質管理や人的資源管理に加え、新規案件獲得のための営業や地域医療介護資源との連携、レセプト業務、事業所の損益管理、事業所の物品管理等の中の全てもしくはいくつかの業務を担っている場合が多いようです。
「経営者」「看護管理者」「事務員」を一人で担い、上述したすべての業務に加えて訪問も自ら担っている方もいらっしゃいます。
一方である会社では「看護師は看護に集中させる」という方針から、損益管理には看護管理者とは別の管理職を置き、レセプトや事業所の物品管理、訪問スケジュール作成等も事務職が行なっています。そこでは、看護管理者のKPI(Key Performance Indicator:業績管理評価のための指標)として訪問件数を置き、地域連携を含めた営業活動や新規受入の判断を中心的な役割としているそうです。また、利用者数をKPIとしておいているという会社もあります。
このように多岐にわたる管理者の業務や責任の範囲ですが、『サービス品質の管理』と『人的資源管理』という要素は共通しています。
訪問看護ステーションの管理者に必要な能力を考えるにあたり、訪問看護事業者の各階層に必要とされる能力を図にまとめました。
(つるがやまさこ)合同会社manabico代表。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。看護師、保健師、MBA。大学病院(精神科)、訪問看護、事業会社での人事を経験後、株式会社やさしい手看護部長として訪問看護事業の拡大に寄与。看護師250人超の面談を実施し、看護師採用・看護師研修等の仕組みづくりをする。看護師が働きやすい職場環境作りの支援を目指し合同会社manabicoを立ち上げる。 【合同会社manabico HP】https://manabico.com※プロフィールは記事配信当時の情報です