訪問看護ステーションの成長に必要な「管理者の育成」

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訪問看護ステーション運営の鍵は管理者にあります。訪問看護ステーション運営に関わられた経験がある方は、高い能力を持つ管理者がいれば事業は好調となり、そうでなければ不調となることを実感されているでしょう。

そこで、訪問看護管理者の仕事の定義と必要な能力についてご説明し、訪問看護管理者育成の手法のヒントを2回にわたってお伝えします。

訪問看護管理者の仕事とは何か~一人3役をこなすステーションも

訪問看護ステーションの管理者は何をする人なのでしょうか?

訪問看護管理者の業務内容や責任の範囲は会社によって異なります。
共通しているのは『(看護)サービス品質の管理』と『人的資源管理(看護師らの労務管理や評価・育成等)』の2つです。

全国訪問看護事業協会をはじめ、様々な団体により訪問看護管理者研修が実施されています。多くの研修に共通する項目には、地域連携、マーケティング、品質管理、人事管理、人材育成、多職種連携、法律等があります。現状では管理者と経営者を兼任している事業所が多いためか、訪問看護管理者研修の中に経営戦略や会計管理、労務管理等の内容が含まれている場合もあります。

色々な会社の管理者さんに実際の仕事内容を聞いてみたところ、看護サービスの品質管理や人的資源管理に加え、新規案件獲得のための営業や地域医療介護資源との連携、レセプト業務、事業所の損益管理、事業所の物品管理等の中の全てもしくはいくつかの業務を担っている場合が多いようです。

「経営者」「看護管理者」「事務員」を一人で担い、上述したすべての業務に加えて訪問も自ら担っている方もいらっしゃいます。

一方である会社では「看護師は看護に集中させる」という方針から、損益管理には看護管理者とは別の管理職を置き、レセプトや事業所の物品管理、訪問スケジュール作成等も事務職が行なっています。そこでは、看護管理者のKPI(Key Performance Indicator:業績管理評価のための指標)として訪問件数を置き、地域連携を含めた営業活動や新規受入の判断を中心的な役割としているそうです。また、利用者数をKPIとしておいているという会社もあります。

このように多岐にわたる管理者の業務や責任の範囲ですが、『サービス品質の管理』と『人的資源管理』という要素は共通しています。

訪問看護ステーションが成長するために必要な階層別能力

訪問看護ステーションの管理者に必要な能力を考えるにあたり、訪問看護事業者の各階層に必要とされる能力を図にまとめました。

この図はマネジメント層に必要な能力を階層・スキル別に示した理論である「カッツモデル」をベースに弊社がご提案しているものです。

働く人に必要な能力を「コンセプチュアルスキル」と「ヒューマンスキル」と「テクニカルスキル」の3つに分けています。

・コンセプチュアルスキル:法律や組織全体の状況等の概念的な理解をした上で経営判断等を行うスキル
・ヒューマンスキル:人との関係性の中で物事を動かしていくスキル
・テクニカルスキル:業務に必要な専門的なスキル

しかし、例えば現場看護師の能力について、ヒューマンスキルは看護の技能に含まれるように、3つのスキルの境目は曖昧で、きっちり線引きできるものではありません。ですので、あくまで各階層によって必要なスキルが異なっているということ。そして階層が経営に近づくにつれ、よりコンセプチュアルなスキルの必要性が高まるということを理解していただければと思います。

ステーションの成長段階によって現場看護師としてのスキルだけではなく管理者としてのスキルが求められるようになります。ここで、組織を運営する立場としては、管理者としての新たなスキル獲得や成長を「楽しい」と感じられるような支援をしていけるかどうかによってステーションの成長が左右されるのではないでしょうか。

訪問看護ステーションの成長を促す管理者のコンピテンシーを理解する

訪問看護ステーションが成長していくための道筋は数多くあります。

良い看護管理者に恵まれれば、スタッフも一丸となってステーションを盛り上げ、連携機関や地域からの信頼を獲得できるでしょう。結果として、途切れなく新規依頼を受けることができ、順調にステーションの規模が拡大するかもしれません。ただし、経営者としてステーションの大規模化や多店舗化を目指しているのであれば、看護管理者が持っていたどんな特性や行動が良かったのか(コンピテンシー)を理解し、後続の管理者教育に活かしていく必要があります。また、訪問看護ステーションのコンサルティング等を新規事業として考える場合もあるかと思います。そのような場合にも、訪問看護管理者がやるべきことについて言語化して伝えられるようにしなくてはなりません。例え事業規模の拡大を考えていなくとも、やはり看護管理者の成長は求められるように思います。

どのような事業展開を考えるにせよ、訪問看護管理者の育成は事業のベースとなる重要な経営課題です。

ここまで訪問看護管理者の仕事について考えてみました。次回はこのコラムの最終回として管理者を育成するための組織体制についてヒントをご紹介したいと思います。

参考文献

スティーブンP.ロビンス(2015)『【新版】組織経営のマネジメント』、ダイヤモンド・グラフィック社

ロバート・L・カッツ(1982)『スキル・アプローチによる優秀な管理者への道』、DIAMOND ハーバード・ビジネス

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