「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(介護分)」は、新型コロナウイルス感染症の影響下で、介護サービスを提供している事業者や職員を支援するために創設されました。6月に実施要項が通知され、各都道府県で交付金の申請受付が始まっています。職員への慰労金や、感染症対策支援、利用再開支援などの事業の概要から、申請方法、注意点など、要点をまとめて確認しておきましょう。
介護サービス事業者や職員への支援は、3つに分けられます。①介護従事者ひとりにつき、5万円もしくは20万円の慰労金を給付する「職員に対する慰労金の支給事業」 ②事業所が感染症対策を徹底するための、物品購入や研修費用などを支援する「感染症対策を徹底した上での介護サービス提供支援事業」 ③サービスの利用再開に向けての利用者への働きかけなどを支援する「介護サービス再開に向けた支援事業」です。
その他、都道府県への支援として、消毒液やマスクなど衛生用品の備蓄支援や、緊急時の応援体制を整えるための支援などがあります。
介護保険法で指定を受けるすべてのサービスが対象となるほか、有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅なども対象となります。
介護保険法で指定を受ける事業所・施設については、国保連経由の申請、有料老人ホームなどその他の事業所・施設については、都道府県への直接申請となる場合が多いようです。一部、申請先によって申請期限が異なる都道府県もありますので、事業所所在地の都道府県の情報を確認しておきましょう。この記事の最後に、各都道府県の情報ページへのリンクを掲載しています。
介護サービス事業所・施設で、利用者と接する業務に従事する職員に対して、慰労金を給付する事業です。感染者が発生した、もしくは濃厚接触者に対応した事業所・施設で、発生後に勤務した、もしくは対象者にサービスを提供をした職員には20万円、それ以外の職員には5万円が給付されます。慰労金は非課税です。
正規、非正規は問わず、パート職員なども給付対象です。また、運転手や事務員、調理員など、利用者と対面する業務であれば、介護職でなくても対象者となります。
条件として、対象期間に10日以上勤務した職員である必要があります(複数事業所で勤務している場合は勤務日数を合算可能。1日あたりの時間は問わない)。
対象期間は都道府県ごとに異なり、事業所の所在地の都道府県で新型コロナウイルスの感染者1例目が発生した日、または感染者の受入日のどちらか早い方の日付から、6月30日までの期間となります。
9月4日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、自治体の関係者から、6月30日までという対象期間を延長するなどの要望もあがっていますが、現状では期間の変更はありません。
2020年4月1日以降に、感染症対策のために発生した費用について、助成金を給付する事業です。助成上限額は、サービス類型毎に設定されています。例えば、通常規模型の通所介護であれば89.2万円、訪問介護であれば53.4万円、広域型特養であれば3.8万円×定員数となっています。
マスクや消毒液などの購入費をはじめ、講師を招いて感染症に関わる研修を実施した場合の費用、感染症対策のために追加的に発生した時間外手当や雇用経費なども対象です。
厚生労働省の実施要項によると、下記の経費が助成対象とされています。
・衛生用品等の感染症対策に要する物品購入
・外部専門家等による研修実施
・(研修受講等に要する)旅費・宿泊費、受講費用等
・感染発生時対応・衛生用品保管等に柔軟に使える多機能型簡易居室の設置等
・感染防止を徹底するための面会室の改修費
・消毒費用・清掃費用
・感染防止のための増員のため発生する追加的人件費
・感染防止のための増員等、応援職員に係る職業紹介手数料
・自動車の購入又はリース費用
・自転車の購入又はリース費用
・タブレット等のICT機器の購入又はリース費用(通信費用を除く)
・普段と異なる場所でのサービスを実施する際の賃料・物品の使用料
・普段と異なる場所でのサービスを実施する際の職員の交通費、利用者の送迎に係る費用
・訪問介護員による同行指導への謝金(通所系サービス事業所が訪問サービスを実施する場合)
・医療機関や保健所等とのクラスター発生時等の情報共有のための通信運搬費
4月1日以降、いつまでの費用が対象となるかは都道府県によって異なりますので、事業所所在地の都道府県の情報を確認しておきましょう。
2020年4月1日以降に、在宅サービス事業所が、利用者に対して利用再開支援の取り組みをした場合や、感染症防止のための環境を整備した場合に、所定の支援額が給付されます。
①利用者への利用再開支援
過去1か月の間、在宅サービスの利用を休止している利用者に対して、健康状態や生活状況を電話または訪問で確認し、利用者の要望を踏まえたサービス提供のために調整等を行った場合に、利用者1人あたり1500円~6000円が給付されます。
②感染症防止のための環境整備
「3つの密」(換気が悪い密閉空間/多数が集まる密集場所/間近で会話や発声をする密接場面)を避けてサービス提供を行うための環境整備に必要なものの購入費等を助成します。助成上限額は、1事業所あたり20万円です。
具体的には下記のものが想定されています。
・長机
・飛沫防止パネル
・換気設備
・(電動)自転車(リース費用含む)
・タブレット等のICT機器(リース費用含む)(通信費用を除く)
・感染防止のための内装改修費
国保連または都道府県に直接、オンライン申請もしくは紙媒体での申請となります。各都道府県のホームページから申請方法を確認しましょう。記事の最後に、各都道府県の情報ページへのリンクを掲載しています。
【注意点】
・慰労金、その他の支援金ともに、申請書をもとに概算交付となります。交付後、実績報告が必要になるので、領収書等の支出の証拠となる書類や、利用再開支援の記録などを保管しておきましょう。実績報告で概算交付分を下回った場合は、差額の返還が必要になるため、申請時にも注意が必要です。
・都道府県によって、慰労金の申請と、その他の支援事業の申請を1回にまとめる場合と、別々に申請する場合があります。1回にまとめるよう求めている都道府県の場合は、申請もれがないよう注意が必要です。
・申請様式をダウンロードして使用する場合、厚生労働省が提示している標準的な申請様式をダウンロードしないようにしましょう。ほとんどの都道府県が、独自の申請様式での提出を求めています。事業所の所在地の都道府県ホームページから、申請様式をダウンロードしましょう。
・各都道府県によって申請期間や申請方法が異なります。また、情報が更新される場合があります。最新情報は各都道府県のホームページでご確認ください。
※9月7日時点
※9月7日時点の情報です。最新情報は都道府県のホームページをご確認ください
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年9月10日掲載のものです。
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