2021年度の介護報酬改定の影響などを示す「介護事業経営概況調査」の結果が厚生労働省から示されました。今後、サービス別の報酬にも影響する重要な調査結果です。これによると、居宅介護支援や訪問リハビリテーションなど一部を除くほとんどのサービスで収支が悪化しています。
2月1日の社会保障審議会・介護給付費分科会の介護事業経営調査委員会では、「令和4年度介護事業経営概況調査結果」の概要案が示されました。これは、20年度(令和2年度)と21年度(令和3年度)の決算の状況を全ての介護保険サービスを対象に調べているもので、24年4月に控える介護保険制度改正・介護報酬改定の方向性を検討するための前提情報となります。(類似の調査に今年実施される「介護事業経営実態調査」もあります)
(【画像】第36回社保審・介護給付費分科会介護事業経営調査委員会資料・令和4年度介護事業経営概況調査結果の概要(案)より。以下同様)
今回示された調査結果によると、23種類のサービス類型のうち21年度改定を経て収支が改善したのは「訪問リハビリテーション」(コロナ補助金を含む税引前収支差率が0.6ポイント改善)、「福祉用具貸与」(同じく1.9ポイント改善)、「居宅介護支援」(1.5ポイント改善)、「夜間対応型訪問介護」(12.4ポイント改善。ただし集計事業所数が少ないため参考数値)、「小規模多機能型居宅介護」(0.6ポイント改善)、「地域密着型介護老人福祉施設」(0.1ポイント改善)の6サービスのみでした。特に、これまで収支差でマイナスが続いていた居宅介護支援がプラスに転じているのは大きな変化です。
介護保険サービス全体では、21年度の決算時点での税引前収支差率が3.0%(0.9ポイント減少)となっており、直近の中小企業全体の経常利益率である3.25%よりも少し低い数値です(※こちらは20年度決算のものです)。
21年度の決算のみを見た時に収支差率(コロナ補助金を含む税引前収支差率)が大きいのは、回答数そのものが少ない夜間対応型訪問介護を除くと「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」(8.2%)、「訪問看護」(7.6%)、「訪問介護」(6.1%)などの順、小さいのは「通所リハビリテーション」(0.5%)「訪問リハビリテーション」(0.6%)「通所介護」(1.0%)などの順となっています(※制度の廃止が決まっている介護療養型医療施設を除く)。
ところで、本調査で得られる数値は基本報酬の動向にも影響する重要な指標ですが、回答率は48.3%(前回調査比0.1ポイント増)と半数に満たない状況です。このことについては、同日の委員会で厚労省の担当者も課題感を表明しています。
この日示された調査結果は、後日開かれる介護給付費分科会で承認された後に正式に報酬改定に向けた検討の土台として扱われます。
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