10月22日に厚労省は第189回社保審・介護給付費分科会を開催。訪問看護における看護体制強化加算の要件を緩和する方針について議論がなされました。また、訪看における理学療法士などリハビリ専門職の役割や、退院当日の訪問看護の算定についても焦点が当てられ、専門家による様々な意見が交わされました。
訪問看護ステーションの体制強化を後押しすることが期待される看護体制強化加算ですが、Ⅰ~Ⅱの算定率がいずれも低水準に留まっている現状があります。その理由として、現行の算定要件である「算定月の前6月間における利用者総数のうち、特別管理加算を算定した割合が30%以上」の部分が実態に即していない点が指摘されました。該当加算を算定できない理由に関する調査では「特別管理加算の対象となる利用者が少ない」との回答が55.0%を占めています。
この点について、日本看護協会の岡島さおり氏は「利用者の状態の変化や入院等に伴う顔ぶれの変化などで、特別管理加算の算定率は月によって変動が起こり得る。看護体制が整っているにもかかわらず、体制強化加算が算定できないケースが一定数ある」とし、サービス提供実態に合った算定要件の見直しを強く要望しました。厚労省は利用者の実態を踏まえた要件の見直しを提案しており、要件緩和の方向で検討が重ねられていくと思われます。
退院当日の訪問看護について、介護報酬でも算定を可能とするかどうかについても議論がありました。現行では特別管理加算の対象に該当する利用者へのサービス提供のみが、診療報酬にて算定可能となっていますが、それ以外の利用者についても、利用者が日中独居である場合などに、訪問看護サービスを提供している実態があります。厚労省は退院後の療養環境を早期に整えるために、退院当日の訪問看護の算定を可能にする方針を示しています。
また、訪問看護ステーションにおける理学療法士等の現状についても議論がなされました。訪問看護におけるリハ職の訪問回数が増加している点や、要支援者へのリハビリ訪問数の増加が提示され、役割を踏まえたサービスの提供について意見が交わされました。
全国老人保健施設協会の東憲太郎氏は「訪問看護ステーションであるにもかかわらず看護職による訪問が少なく、多くがリハビリ専門職によるサービス提供となっている。人員配置基準において、一定程度の看護職員割合を求めるべきでは」と提言。
一方、日本慢性期医療協会の武久洋三氏は、サービスの必要性は利用者側が判断するものとして、「軽症者はリハビリが中心となり、重傷者は訪問看護が中心となるのは、自然の成り行きだと思う。リハビリのウエイトが高いからといってペナルティがある、という対応はしない方が利用者のためでは」と意見を述べました。
引用:第189回社保審・介護給付費分科会「訪問看護の報酬・基準について(検討の方向性)」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年10月26日掲載のものです。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。