第192回社保審・介護給付費分科会が11月9日に開かれ、生活援助の訪問回数が多い利用者への対応について議論が行われました。
2018年度の報酬改定により、統計的に見て通常とはかけ離れた訪問回数をケアプランに位置づける場合、ケアマネジャーはケアプランを市町村に届け出ることになっています。市町村は地域ケア会議でケアプランを検証し、必要に応じてサービス内容の是正を促します。
この仕組みについては、「届け出を避けるため、生活援助が身体介護に振り替えられているのではないか」「要介護度別に一律の基準(回数)を当てはめることが適切か」などの指摘があります。これらの内容は11月2日に行われた財政制度等審議会でも議題になりました。
なお、厚生労働省は生活援助中心型サービスが、一定回数以上となった場合にサービスの利用制限を行うものではなく、適切なサービス提供のための仕組みであるとしています。
これらの現状を踏まえて厚労省が提示した検討の方向性は、ケアマネジャーや市町村の事務負担にも配慮して、届出のあったケアプランの検証の仕方や届出の頻度について、運用面の見直しを促すものでした。
居宅支援事業所に対して行った調査によると、訪問回数が多い生活援助中心型のケアプランを毎月市町村に届け出ることは「適切ではない」が73.7%。適切な届出の頻度は6カ月に1回が最も多い意見となっています。
制度の課題としては、「市町村に提出する資料の作成に時間がかかる」の回答が47.8%となりました。
委員からは届出頻度の見直しについて、賛成の意見が多くあがりました。日本介護支援専門員協会の濱田和則氏は「関係する様々な職種の人が負担を強いられている点を考えて、報告の頻度を見直すことをぜひやっていただきたい」と要望しました。
また、日本介護福祉士会の藤野裕子氏は、「届け出を避けるため、生活援助が身体介護に振り替えられているのではないか」という指摘に対して、生活介護と身体介護は支援内容が異なり、簡単には振り替えられないと指摘しました。
一方、日本経済団体連合会の間利子参考人からは、保険料、公費を使う以上、ケアプランの妥当性は確認すべきなので、現状の基本的な枠組みは維持すべきとの反対意見が出されました。また、健康保険組合連合会の河本滋史氏は、業務負担への配慮は必要だが、届出頻度の基準を緩和し過ぎないようにと指摘しました。
引用:第192回社会保障審議会介護給付費分科会「制度の安定性・持続可能性の確保(検討の方向性)」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年11月12日掲載のものです。
ライター歴8年、介護業界取材歴5年。介護業界の経営者や現場責任者、介護関連施設への取材を重ねてきました。介護業界を支える皆さまの役に立つ情報発信を心がけています。