8月3日の介護給付費分科会では介護報酬改定に向けた事業者団体ヒアリングが行われました。各団体からは、現在設定されている加算について、要件緩和や評価の拡大などを求める声が多くあがっています。まとめて確認しておきましょう。
訪問介護では、生活機能向上連携加算の算定要件である、医療機関やリハ施設の専門職との連携が大きなハードルになっています。訪問看護事業所のリハ専門職との連携でも算定できるような運用について要望があがりました。
一方、全国訪問看護事業協会からは、看護体制強化加算において、看護職の人員基準を設ける提案がありました。看護職を全体の60%以上とする要件です。医療ニーズの高い利用者への提供体制を強化するという加算の主旨にあった人員基準の検討が必要としています。
また、利用者や家族等に24時間対応できる体制を評価する緊急時訪問看護加算(現行574単位または375単位)について、医療保険における24時間対応体制加算(6,400円)と同額にするという要望もありました。
かねてから単価の低さと事務負担の大きさが指摘されていたADL維持等加算について、全国介護事業者連盟は大幅な単価アップを求めました。その他、下記の要望があがっています。
・総数20名以上の見直し(地域密着型通所介護でも算定可能に)
・要介護度3以上の者の割合が15%以上の見直し
・5時間以上の通所介護費の算定基準の見直し
・アウトカム評価となる加算Ⅰの単価を加算Ⅱより高く設定
・通所介護事業だけでなく他サービスにおいても算定可能に
小規模多機能では、訪問利用のある利用者宅への訪問回数は年々増加しています。1,773事業所を対象にした調査によると、訪問体制強化加算の指標となる200回/月以上が58%、400回/月以上は24.9%となっています。現行の訪問体制強化加算を2段階にして、訪問回数が多いことを評価してほしいという要望があがりました。
また、利用者の暮らしを支えるために、民生委員と連絡をとる、ご近所や友人と連絡をとるなどして、見守りネットワークを構築しており、居宅介護支援業務にも取り組んでいるとして、総合マネジメント体制強化加算の引き上げも求めました。
他の訪問系サービスと同様に、離島・中山間地域等に対する加算を算定できるようにしてほしいという要望もありました。
1,405施設を対象にした調査によると、約半数の法人が処遇改善加算、特定処遇改善加算に対して、使いづらさを感じているといいます。理由としては、事務負担が大きいこと、支給について職員間の不公平感がある中で法人裁量が小さいこと、加算がいつまであるかわからないので基本給に乗せにくいこと、などがあげられました。
職員間の不公平感に対して、算定している法人の74%が、対象とならない職員に対して持ち出しで賃金改善を実施しているという調査結果も共有されました。
加算対象、配分方法の見直し、法人裁量の拡大、事務負担の軽減をスピード感を持って進めることなどを要望しています。
●社会参加支援加算、事業所評価加算
社会参加支援加算について、要支援者にこそ地域活動への参加を促すプロセスが必要として、加算の対象を要支援者にしてはどうかという提案がありました。一方、事業所評価加算の対象は要支援者で、要介護者は除外されています。利用者の状態が維持・向上した割合を評価する加算なので、こちらについては要介護者を対象にしてはどうかと提案しています。
●短期集中個別リハ実施加算、生活行為向上リハ実施加算
短期集中個別リハ実施加算の対象は、退院・退所、初回認定日から3か月以内の利用者とされています。短期集中個別リハ実施加算や生活行為向上リハ実施加算の算定要件を弾力化し、退院・退所、初回認定日からの期間に限らず、必要に合わせて集中的なリハビリを提供できるようにしてはどうかと提案しています。
●訪問リハビリテーションにおけるリハマネジメント加算
訪問リハにおけるリハ診察の評価が不十分として、リハマネジメント加算Ⅱ~Ⅳの単位の上げ幅について、通所リハと同じ上げ幅にしてほしいという要望がありました。同じ上げ幅になると、加算Ⅱが370単位(現行280)、加算Ⅲが640単位(現行320)、加算Ⅳが740単位(現行420)となります。
●訪問リハビリテーション費における退院・退所直後3か月の回数制限
医療保険と同様に、退院・退所後3か月間は、1週間に12回まで報酬を算定することを可能にして、回数制限を緩和してほしいという要望がありました。退院・退所直後はADL低下を起こしやすいため、在宅生活を早期に安定させることが目的です。
各事業者団体から、現行の加算について様々な要望があがりました。これらのヒアリング結果を参考に、今後の議論が進みます。議論の動向をチェックしておきましょう。
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年8月7日掲載のものです。
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