いつもコラムを読んでいただきありがとうございます。各回の特典応募の際に併せてアンケートにご回答いただいていますが、「経営理念、ミッション・ビジョン・バリューを明確化したい」という課題が案外と多いなぁと感じています。 経営理念が明確化できないのは、「頭の中が整理できない…」、「言葉が浮かばない…」という悩みが裏にあることが多いです。 この悩みにお答えし、経営理念の明確化作業に大きな力を発揮するのが、ChatGPTです。今回は、ChatGPTを利用することで、簡単に経営理念を明確化させる技術をお伝えします。
経営理念には、正しい形式や言葉といったルールは一切ありません。 だから、誰かからクレームを言われる筋合いはありませんし、経営者は何ら制限なく、自由に経営理念を作ることができます。
まだ明確な経営理念がない介護事業所には、これを機会に取り組んでいただきたいです。
そもそも経営理念とは、経営者の経営哲学や商売に対する信念や想いのことを指します。そして、経営理念に基づいて企業活動をすることで、経営理念の実現を目指します。つまり、経営理念とは、経営者が目指す会社の理想の姿ということです。
しかし、事業を始めるにあたり、最初から経営理念が必要かといえばそうではありません。
例えば、「大人になったらケーキ屋さんになりたい」というA子さんの子供のころの夢は、ケーキ屋さんを開業することです。だから、ケーキ屋さんが開業できた時点で、その夢は実現しています。開業にあたって、特に経営理念などは必要ありませんね。
一方で「私が作ったケーキを食べた人に笑顔になって欲しいから、大人になったらケーキ屋さんになりたい」というB子さんの子供ころの夢には、「私が作ったケーキを食べた人に笑顔になって欲しい」という想いがあります。つまり、「私が作ったケーキを食べた人に笑顔になって欲しい」が経営理念となります。夢は、ケーキを食べて笑顔になった人に会えるまで実現しませんね。だから、「どうしたら私が作ったケーキを食べて笑顔になってくれるんだろう」と考えながら、日々試行錯誤するわけです。そして、食べて笑顔になれるケーキの研究開発が行われ、笑顔になることを助長するための店舗や接客が考え出され、全てにおいてレベルアップしていきます。
あなたは、A子さんのお店のケーキとB子さんのお店のケーキが目の前に並べられたら、どちらのケーキを食べてみたいと思いますか。私には、B子さんのお店で売られているケーキのほうが断然美味しいような気がします。
ケーキ屋さんと同様に、介護事業所においても経営理念があるのとないのでは、大きな違いが出てきます。
スタッフ目線では、明確な経営理念がある介護事業所のほうが働きやすい環境であると言えます。なぜなら、経営理念の存在は判断基準があることと言い換えることができるからです。
利用者目線に立つと、「明確な経営理念があるから、どのスタッフからも偏りのないサービスが受けられる」という期待感を満たすことができます。経営理念がなければ、スタッフによってサービスの質が異なり、「Xさんはいいけど、Yさんはね…」などと、利用者の不満が募る要因にもなりかねません。
このように具体的な事例を考えていただくと、経営理念の大切さが理解し易いですね。
さて、松下幸之助さんの言葉に、「企業経営の成否の50%は経営理念の浸透度で決まる。残りの30%は社員のやる気を引き出す環境、残りの20%は戦略・戦術である」という名言があります。
経営理念がない現状では、介護事業所の未来、ゴール設定、あるべき姿がわからないため、経営のかじ取りが大変難しくなります。
経営理念づくりにチャレンジしたくなってきましたよね。
経営理念を作るにあたっては、さまざまな方法が考えられます。
創業社長であれば、自らの経営に対する考え方をまとめて、文字に起こせば経営理念の明確化はすぐにできます。
自らの考え方がまとまらないという社長なら、次のような方法で経営理念を明確化することもできます。
例えば、有名企業の経営理念を真似することが、簡単で有効な方法として良く実践されています。目指したい経営者、尊敬する経営者が掲げている経営理念であれば、特に腑に落ちやすいですね。
京セラの経営理念は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」です。この言葉をTTP(徹底的にパクる)している経営者はとても多いと思います。
ソフトバンクの経営理念は「情報革命で人々を幸せに」です。
有名な企業であれば、インターネットを通じて企業名と経営理念で検索すれば、いくらでも経営理念を探し出すことができます。最もお手軽な方法ですから、ぜひお試しください。
経営陣や経営幹部で、ブレーンストーミングをしながら、自社で大事にしたいことをまとめていく方法もあります。三人寄れば文殊の知恵ではありませんが、経営者が経営理念を作るにあたり、他人の力を借りてはいけないというルールなど、どこにも存在しません。文才のあるスタッフやSNS投稿が得意なスタッフがいれば、一緒にブレーンストーミングしても良いでしょう。
言語化、あるいは文字化とは、頭の中の考え方や想い、意見などを、言葉を通じて相手に伝える技術です。
技術なので、この技を持っていない経営者が経営理念づくりに取り組むと、言葉が出てこず、あきらめてしまう。現実的にはそんな経営者は多いのではないでしょうか。
言語化する力、文字化する力は、語彙力に比例します。高い語彙力は、たくさんの読書から生まれます。すなわち、これまで日本をあまり読んでこなかった経営者が、突然経営理念を作ろうと思っても、言葉にできないのは当たり前なのです。
そこで、文字化、言語化が得意な、AIの力を借りて、経営理念を簡単に作成する方法をお伝えします。
オープンAIのChatGPTを利用したことはありますか。
ChatGPTの得意なことは、文字化、言語化です。
次の流れでChatGPTにお願いすれば、簡単に経営理念が明確化できます。
ただし、有料版のChatGPTを利用してください。確実に成果が違います。ChatGPTは、毎月たったの20ドルで使えるので、会社で1つ購入しておくととても便利です。
1.ChatGPTを起動する 2.メッセージ欄に『経営理念を作りたい』と入力し送信する 3.ChatGPTがいくつか候補を回答してくれる 4.それらの中から自社に合いそうな経営理念を選ぶ
以上で、経営理念の明確化は終ります。簡単に、すぐできます。
なお、ChatGPTに『経営理念を作りたい』とお願いするときにChatGPTに与えるべき情報があります。ChatGPTに詳しい情報を与えれば与えるほど、経営者の考えに近い経営理念の例文を教えてくれます。
1.自社の情報をできるだけ詳しく伝える 2.自社の未来、あるべき姿、実現したいことなどをできるだけ詳しく伝える 3.現状の課題があれば、その課題を伝える 4.簡潔な経営理念、ある程度しっかりした経営理念など、期待するアウトプットに応じて希望する文字数を伝える
以下は、ChatGPTにお願いして作成してもらった介護事業所向け経営理念の候補です。気に入ったものや考えに合うものがあればそのまま使っていただくこともできます。少し手を加えて、オリジナル要素を出してもいいかもしれません。
ただし、ChatGPTを初めとした生成系AIには、入力した情報が学習データとして使われた場合(※設定をオプトアウトにすれば避けられます)、情報漏洩につながるリスクもあります。ここで示した作業と直接関係はありませんが、個人情報や顧客情報、そのほかの機密情報の入力は避けるようにしましょう。
経営理念をスタッフに浸透させるには、スタッフに対し「経営理念とは何ぞや」ということを伝えることから始めなければなりません。
最近の採用手法のひとつに「理念採用」というものがあります。経営理念に賛同して入職してきたスタッフであれば、経営理念の実現に向けて、会社と一丸となって進むことができます。
しかし、新しく経営理念を作った場合、「新しく経営理念を作ったのでこれに従って行動してください」と以前からいるスタッフに伝えたとして、その実現に向けて素直に行動できるでしょうか。現実的には、難しく、その内容に納得しなければ、スタッフが行動を起こすことはないでしょう。
そこで、経営理念の必要性をスタッフにわかりやすく伝えるための6つのポイントがあります。
ぜひ、以下の内容を参考にして、全体会議などで経営理念実現の必要性を伝えてください。
特に、「4. 利用者に理解してもらえる」は、カスタマーハラスメント対策にも有効ですね。
【例文】
経営理念とは、会社とスタッフのみんなが大切に思っていることや、目指していることを言葉にしたものです。経営理念を実践すると、スタッフや利用者のみなさんには、6つの良いことがあります。
1. 目標がはっきりする
経営理念があると、スタッフのみんなが一緒に目指すべきことがはっきりします。みんなで力を合わせて、同じゴールに向かうことができます。
2. みんなが仲良くなれる
経営理念を共有することで、スタッフのみんなが同じ考えや価値観を持つことができます。これにより、みんなが仲良く協力しながら働くことができます。
3. どうすればいいかわかる
経営理念を見ると、スタッフのみんながどういう行動を取ればいいのか、どうすれば利用者や他のスタッフが喜ぶのかがわかります。これが、みんなの判断の基準になります。
4. 利用者に理解してもらえる
経営理念を通じて、利用者さんに私たちの職場の考えを伝えることができます。これにより、利用者さんに私たちの行動や目指す環境を理解して、サービスを利用してくれるようになります。
5. みんなが楽しく働ける
経営理念が明確であればあるほど、スタッフのみんなは自分の仕事にやりがいを感じ、楽しく働くことができます。
6. 社会に良い影響を与える
経営理念を持つことで、会社やスタッフのみんながどうやって社会に良い影響を与えるかがわかります。これにより、地域のみんなに愛される介護事業所になれます。
経営理念は、会社やスタッフのみんながどうありたいかを表す大切な言葉です。これを大切にすることで、会社の経営やスタッフの皆さんの働く環境はもっと良くなり、利用者さんの期待に応えることができ、みんなが幸せになれます。
経営理念の重要性をスタッフの皆さんが理解してくれたところで、具体的に何をすれば良いのかをスタッフの皆さんに考え、実行してもらいます。
例えば、前記の例文1~6を実現するために何をしたら良いのかという行動指針を、スタッフに考えてもらいます。
経営者が勝手に考え、スタッフに押し付けるものではなく、スタッフ自らが考えた指針であれば、行動に起こしやすくなります。行動ですから、日々の作業も含まれてきます。日々の作業をしない経営者も多いと思いますので、スタッフの力を借りて、現実に即した行動指針を作ることをおすすめしています。
しかし、「はい、スタッフのみなさんで、経営理念を実現するための行動指針を作ってください」と伝えたところで、なかなか作れるものではありません。
実は、この作業にはコツがあり、プラス思考でアイデア出ししていくと、とても良いものが出やすくなります。一方で、あれダメ、これダメなど、ネガティブなアイデア出しをしていると全く作業が進まなくなります。
そこで、次のいずれかに該当するアイデアを出すようにスタッフの皆さんにお伝えして、行動指針作りをスタートさせてください。
私たちの事務所がコンサルティングするときは、行動指針作り作業をらくにするために「やりたいことリスト」を利用しています。
これから、経営理念をスタッフに落とし込み、浸透させようと考えているのなら、ぜひご活用いただきたいアイテムのひとつです。
希望される方には、行動指針作りに役立つ「やりたいことリスト」をプレゼントいたします。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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Office SUGIYAMA グループ代表。採用定着士、特定社会保険労務士、行政書士。1967年愛知県岡崎市生まれ。勤務先の倒産を機に宮崎県で創業。20名近くのスタッフを有し、採用定着から退職マネジメントに至るまで、日本各地の人事を一気通貫にサポートする。HRテックを精力的に推進し、クライアントのDX化支援に強みを持つ。著書は『「労務管理」の実務がまるごとわかる本(日本実業出版)』『新採用戦略ハンドブック(労働新聞社)』など