12月2日に開かれた第195回社保審・介護給付費分科会にて、2021年度介護報酬改定の取りまとめに向けた、運営基準の改正事項案が示されました。全サービスに共通した改正案では、会議や多職種連携でのテレビ電話の活用容認や、各種諸記録の保存・交付で電磁的な対応を認めることなどが示されました。今回提示された運営基準の改正について、全サービスで共通となる項目をまとめて解説します。
新型コロナウイルスの感染拡大防止や多職種連携の促進の観点から、サービス担当者会議など運営基準において実施が求められる各種会議について、テレビ電話など、ICTを活用した会議開催が協議されてきました。
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これまでの専門家からの意見を踏まえ、厚労省は会議や多職種連携におけるICTの活用について、以下の2点の見直しを提案しました。
利用者等が参加せず、医療・介護の関係者のみで実施するものについて、「医療・ 介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」及び「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を参考にして、テレビ電話等を活用しての実施を認める。
利用者等が参加して実施するものについて、上記に加えて、利用者等の同意を得た上で、テレビ電話等を活用しての実施を認める。
この改正案について、神奈川県知事黒岩委員代理の水町参考人は「一定の条件のもと、テレビ電話等を活用しての実施を認めることについては、業務負担軽減の観点から促進すべきであり賛成」との意見を表明。他の委員からも反対意見は聞かれませんでした。
利用者への利便性向上や介護サービス事業者の業務負担軽減の観点から、これまでは書面上(紙媒体)での対応や保存、交付が原則だったものについて、電磁的な対応を原則認める改正案が提示されました。記録の保存に関しては、課題となっていたローカルルールの解消にもつながることが期待されています。具体的に示された関連改正案は、以下の通りです。
ケアプランや重要事項説明書等における利用者等への説明・同意において、書面で説明・同意等を行うものについて、電磁的記録による対応を原則認めることとする。
介護サービス事業者における諸記録の保存・交付等について、電磁的な対応を原則認めることとし、その範囲を明確化する。
全国老人保健施設協会の東憲太郎氏は、この改正案に賛成の立場を示したうえで、「現場では実地指導等で行政側から紙ベースでの資料提示を求められることも多い。こちらについても電子媒体で可能だということを徹底して周知してほしい」と意見を述べました。
介護サービス事業者に感染症に関する取組の徹底を求める観点から、これまで施設系サービスに義務付けられていた「委員会の開催、指針の整備、研修の実施等」及び、追加事項となる「訓練(シミュレーション)の実施」を全サービスに義務付ける改正案が示されました。その際、3年間の経過措置期間を設けることも併せて明記されています。
このほか、適切なハラスメント対策を求めること、CHASE・VISITを活用した計画の作成や事業所単位でのPDCAサイクルを促進すること、高齢者虐待防止の促進に向けた取り組みなどが提案されています。
提示された運営基準の改正案について、委員からの目立った異論はなく、今回提示された取りまとめを基準に議論が進められる見込みです。
引用:第192回社保審・介護給付費分科会「介護人材の確保・介護現場の革新」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。