2020年6月に公布された「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」に基づき、「社会福祉連携推進法人制度」の運用開始が予定されています。
直近では、介護事業所・施設の運営効率化の促進を主張する財務省も、この制度の積極的な活用を求めています。また、厚生労働省の検討会が5月半ばにまとめた提言(社会福祉連携推進法人の運営の在り方等に関する検討会とりまとめ )では同制度の活用による介護人材の確保への期待も示されています。
本記事にて、社会福祉連携推進法人制度および検討会の取りまとめの概要について解説します。
社会福祉連携推進法人制度とは?
社会福祉連携推進法人とは、複数の社会福祉法人がグループ化した一般社団法人です。複雑な地域の福祉ニーズに応え、社会福祉法人の経営基盤の強化を推進していくために、福祉サービス事業者間の連携方策の新たな選択肢として創設されます。社会福祉法人を中核とする非営利連携法人で、合併のように資産を統合する必要はありませんが、共同で、福祉人材の確保や人材育成、設備・物資等の購入が可能になることが特徴です。
社会福祉連携推進法人制度の創設とこれまでの経緯
社会福祉法人を取り巻く環境や福祉ニーズが変化・複雑化していることなどを踏まえ、2019年4月~2020年11月に「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会」が開催されました。この検討会は、今年の5月に取りまとめを行った検討会の前身となる会議で、2020年6月に「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」(2022年6月までに施行予定)が公布され、同法に基づき社会福祉連携推進法人制度が創設されることとなっていることを踏まえたものです。
「社会福祉連携推進法人の運営の在り方等に関する検討会」の位置付け
5月に取りまとめを行った「社会福祉連携推進法人の運営の在り方等に関する検討会(以下、検討会)」では、社会福祉法人連携推進法人制度の円滑な運営に向けて、制度の在り方や具体的な運用方法(ガバナンスルールや業務内容)など、先述の「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会」で持ち越しとなった論点について整理・検討しています。
社会福祉連携推進法人制度でできること
社会福祉法人連携推進法人制度は社会福祉法の定義では以下の3点を目的として設立され、運営されなければならないとされています。
1.社員の社会福祉に係る業務の連携を推進
2.地域における良質かつ適切な福祉サービスの提供
3.社会福祉法人の経営基盤の強化
その、具体的な業務としては、
▽地域共生社会の実現に資する業務の実施に向けた種別を超えた連携支援
▽災害対応に係る連携体制の整備
▽福祉人材不足への対応
▽設備の共同購入等の社会福祉事業の経営に関する支援
などが想定されています。
同じ目的意識を持つ複数の社会福祉法人が個々の自主性を保ちながら相互に連携しあうことで、適切な福祉ニーズへの対応を可能とする規模の大きさを活かした法人運営が可能になります。

*「社会福祉連携推進法人の運営の在り方に関する検討会取りまとめ」中、説明資料から一部を抜粋:https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000779161.pdf
「社会福祉連携推進法人の運営の在り方に関する検討会」取りまとめの概要
「社会福祉連携推進法人の運営の在り方に関する検討会」では、社会福祉連携推進法人の業務内容やガバナンスルール、貸し付けの実施方法等を主な検討項目とし、全5回にわたって議論が行われてきました。今回取りまとめでは、以下の項目に沿って論点が整理され、対応の方向性を示す形で公表されています。
・社会福祉連携推進法人の業務(総論)
・社会福祉連携推進法人の業務(社会福祉連携推進業務)
・社会福祉連携推進認定の申請等
・社会福祉連携推進法人のガバナンス
関連資料:厚生労働省「社会福祉連携推進法人の運営の在り方等に関する検討会とりまとめ」https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000779161.pdf
地域共生社会の実現に向け、地域ニーズに対応した新たな取り組みを創出し、その担い手となる福祉・介護人材の確保・育成等を進めていく観点から、地域の福祉サービス事業者間の連携・協働のためのツールとして有効に活用されることが期待されています。