2024年4月1日から、労働条件明示のルールが変更されます。
対象となる労働契約は、2024年4月1日以降に締結される労働契約です。まず、2024年3月31日までの取扱について、次の2点を理解しておいてください。
①既に雇用されている労働者に対して、改めて労働条件を明示する必要はないこと ②契約の始期が2024年4月1日以降であっても、2024年3月以前に契約の締結を行う場合には、改正前のルールが適用され、新たな明示ルールに基づく明示は不要であること
なお、厚生労働省の資料によれば、『もっとも、労働条件に関する労働者の理解を深めるため、令和6(2024)年3月以前から新たな明示ルールにより対応することは、望ましい取組と考えられる』とされています。つまり、早目にルール変更を適用しても構わないどころか、望ましいとされています。それならば、使用している労働契約書や労働条件通知書のひな形を見直して、早目にルール変更に対応しておきましょう。
変更される事項及び注意すべきポイントを以下に紹介します。
労働条件を正しく伝えないとどのようなリスクが考えられるでしょうか?スタッフが自分の労働条件をしっかり理解できていないと、スタッフと介護事業所の間で誤解が生じやすくなり、時にはトラブルに発展しかねません。
また、労働条件が明確でないと、働く人たちが自分たちの権利を守ることが難しくなります。例えば、どんな仕事をさせられるのか、有期労働契約の将来像がはっきりしないと、働く人は不安に感じるかもしれません。これが原因で、職場では不満が溜まりやすくなり、結局、スタッフが退職してしまうことに繋がりかねません。
つまり、労働条件をはっきりさせることは、働く人たちが安心して働ける環境を作るためにとても大切ということです。
2024年4月からの新しいルールは、このような問題を解決し、みんなが納得できる明るく公平な職場を作るためのものです。
このような前提の下で「労働基準法施行規則」「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が改正されました。
これに伴い、次のとおり介護事業所でも、働く人に対して明示すべき事項が増えることとなりました。
労働者
有期労働契約の更新時
更新時
(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)
無期転換申込権が発生する 契約の更新時
無期転換後の労働条件
なお、明示事項に応じて有期契約労働者に対し、次の行動が求められています。
義務:更新上限を新設・短縮しようとする場合、その理由をあらかじめ説明すること 努力義務:無期転換後の労働条件を決定するに当たり、他の正社員等とのバランスを考慮した事項の説明に努めること
参考までに、義務とはしなければならないことです。説明は口頭でできますが、介護事業所が説明義務を確実に果たしたことを証明するためには、例えば「説明済み証明書」などの確認書類にスタッフのサインをもらっておくことがポイントとなります。労働局や労基署の調査の際に、実施した記録をペーパーで残しておくと義務を果たした証拠となります。
一方で、努力義務とは、例えしなかったとしても何ら罰則は問われないということです。しかしながら、努力義務違反により事故が発生したり、トラブルが発生した場合には、しなかったことを理由に損害賠償請求をされることも考えられます。つまり、努力義務のものでも、義務と同様に考えて、実行しておけば、将来的にトラブルに巻き込まれる確率は大きく減少すると考えられます。
「変更の範囲」の明示は、就業場所・業務がどの程度限定されるかにより記載内容が異なります。
ポイントは、雇入れ直後(ビフォー)と変更の範囲(アフター)を対比させて記載することです。
厚生労働省では、4つの状況を想定して記載例を公表しています。 その中から介護事業所で使われそうな記載例を、介護事業所向けにカスタマイズしてみました。貴社の状況に合わせてご活用いただければと考えています。
Office SUGIYAMA グループ代表。採用定着士、特定社会保険労務士、行政書士。1967年愛知県岡崎市生まれ。勤務先の倒産を機に宮崎県で創業。20名近くのスタッフを有し、採用定着から退職マネジメントに至るまで、日本各地の人事を一気通貫にサポートする。HRテックを精力的に推進し、クライアントのDX化支援に強みを持つ。著書は『「労務管理」の実務がまるごとわかる本(日本実業出版)』『新採用戦略ハンドブック(労働新聞社)』など