11月16日に開かれた第193回社保審・介護給付費分科会にて、2021年度の介護報酬改定に向けた具体的な論点と対応案が示されました。通所介護に関しては、入浴介助加算に付随した新加算の創設や、個別機能訓練加算の統合などについて議論がなされましたので、本記事でまとめていきます。
現行の入浴介助加算は通所介護で94.5%、地域密着型通所介護で77.8%、認知症対応型通所介護で98.1%など、算定率が非常に高くなっています。厚労省はこの実績に加え、利用者が自立して入浴を行うことができるよう、自宅での入浴回数の把握や個別機能訓練計画への位置づけを行っている事業所があることを提示。
これを踏まえ、現行の加算に加えて、利用者が自宅で自身または家族の介助によって入浴を行うことができるよう、身体状況の把握や浴室環境を踏まえた個別入浴計画を作成し、それに基づいて個別の入浴介助を行う事を評価する加算の新設を提案しました。
現行では、個別機能訓練計画を策定している場合の入浴に関わる項目について、「設けていない」が40.7%と最も多い結果になっています。また、設けている場合は「脱衣、洗髪、洗身、椅子の立ち座り、浴槽またぎ、着衣等、入浴にかかる一連の動作について目標設定」などの設定項目例が提示されました。
対応案には新たな加算の創設と併せ、前出の取組を促す観点から、現行の入浴介助加算の単位数見直しも示されました。以上の対応案に対し、本分科会では前向きな意見が多く聞かれたため、今後は提示された方向で検討が進められる見込みです。
個別機能訓練加算については、小規模事業所ほど人員配置要件を満たすことが難しく算定率が低い課題や、サービス横断的に自立支援・重度化防止に向けた取組(機能訓練)を実施する観点、報酬体系の簡素化などの観点から、見直しが検討されてきました。
これまでの議論を踏まえて、個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱを統合し、人員配置要件や機能訓練項目の見直しを行う対応案が、厚労省から提示されました。
具体的な見直し案として、小規模事業所でも必要な人員を確保できるよう、人員配置要件を「専従1名以上(配置時間帯の定めなし)」とすることや、「常勤・専従1名以上(サービス提供時間帯を通じて配置)」を要件とした上位区分を設けるなどの見直し案が示されています。
この対応案について、全国健康保険協会の安藤伸樹氏は、加算統合に賛同したうえで「今回の資料では単位数は明示されていないが、メリハリのある単位設定をするべき」と意見を述べました。他の委員からも反対意見は聞かれず、今後は上記対応案に沿って議論が進められる見込みです。
本分科会では通所介護における地域連携についても議題となりました。現行では、地域密着型通所介護等において運営基準上で設けられている地域との連携にかかる規定について、通所介護には規定されていません。
この点に関して、通所介護事業所における地域での社会参加活動、地域住民との交流を促す観点から、他の居宅サービスと同様の基準を設ける対応案が示されました。
NPO法人高齢社会をよくする女性の会の石田路子氏は「介護施設やサービス事業所が地域にとって当たり前の社会資源だと地域住民が認知する、ということは今後もどんどん進めていくべき」と延べ、本論点に賛成意見を述べました。
引用:第193回社保審・介護給付費分科会「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の報酬・基準について」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。