居宅介護支援事業の経営のほか、広く一般事業者さんへの助言等を通じて介護離職予防に取り組んでいる畑野充則と申します。6月15日に福岡県北九州市において、私も参画している任意団体 neigeの会は「仕事と介護応援フォーラム」(以下、フォーラム)を主催しました。このイベントは、産業ケアマネ(「ケアマネジャーを紡ぐ会」が認定する民間資格の保有者)が主体となって、仕事と介護の両立支援の必要性について普及促進するために企画したもので、現地とオンラインを合わせて100名以上の参加者が集まりました。
ものづくりの街・北九州市を舞台としたこのイベントでは、ICTやAIの活用も重要なテーマとして取り上げました。
今回は、このフォーラムの様子をレポートさせていただきます。
団塊世代が後期高齢者となり少子高齢化が加速する日本において、仕事と介護の両立支援は喫緊の課題です。今回のフォーラムは、「仕事と介護の両立支援の必要性」について、また、「企業が従業員の介護離職を防止するための今後の取り組み」についてを学ぶ場として開催しました。
このフォーラムは、午前と午後の二部構成で1日かけて行いました。
午前の部は、「介護ITハッカソン」の成果発表会、午後の部では、仕事と介護の両立支援をテーマとした基調講演やパネルディスカッションを開催しました。
介護ITハッカソンとは、ITツールなどを使って介護現場の課題を解決するツールや仕組を開発し、そのアイデアや成果を競い合うイベントです。3月にあったキックオフセミナーから交流をしていたメンバーが各チームに分かれ、アイデアや成果を発表しました。
発表内容には、AIを活用したアセスメントに基づくケアプランの作成、独居・認知症の方へのIoT機器支援、介護従事者の孤立を防ぐアプリなどが含まれていました。
発表後には九州工業大・ケアXDXセンターのセンター長である井上創造教授に講評をいただきました。
基調講演では、要介護者の家族支援や情報発信などを中心に活動しているNPO法人となりのかいごの代表理事・川内潤氏に「本質的な仕事と介護の両立」をテーマにお話しいただきました。川内氏は早期支援の重要性を強調しており、その中で、「親の長生きが喜べなくなったら、それは良い介護とは言えない」などと述べ、それが参加者にも印象を残したようです。また、早期支援を進めるための人材育成が急務であると訴えました。
基調講演の後に実施したパネルディスカッションでは「介護者の心に寄り添う支援」をテーマとして、仕事をしながら家族の介護を経験した当事者、介護サービス事業者らが活発な議論を交わしました。
このほか、実際に両立支援に取り組んでいる方々の活動共有もありました。この実践報告では、企業との顧問契約までの道のりや活動展望などの具体的な事例について紹介があり、参加者にとっても大きな励みとなったようです。
フォーラムを終え、参加者からは、現地・オンライン問わず、実践者の熱意とエネルギーが感じられたなど多くの声をいただきました。
2025年には団塊世代が後期高齢者となり、少子高齢化社会がさらに加速することが予測されています。こうした状況を踏まえ、仕事と介護の両立支援の必要性について広く啓発する機会となったと感じています。なお、次回は同様の取り組みを11月9日に大阪でも開催予定です。
今回のレポートが皆様にとっても、両立支援について考えるきっかけになれば幸いです。また、介護に関心を持つ方、介護従事者の方、そして、仕事と介護の両立支援に関心を持つ方にも、ぜひご一読いただければと思います。
株式会社エンジョイライフサポーター代表取締役。望まない介護離職を予防するため、介護離職防止に関するセミナーやワークショップなど、仕事と介護の両立支援に取り組む。「ケアマネジャーを紡ぐ会」が主催する「仕事と介護両立支援コンサルタント」の養成講座第0期生としても活動。仕事と介護応援フォーラムの実行委員を担う。