2025年以降、生産年齢人口が急激に減少し、2040年には100歳以上の人口が30万人以上になると予想されている。高齢者をはじめとして多様な就労・社会参加を促進し、社会全体の活力を維持していくために、健康寿命を延伸する必要がある。また、自立して長生きするためには、介護予防やその前段階であるフレイル予防の果たす役割がより重要となる―。
経済産業省はこうした問題意識から、2020年7月31日の健康・医療新産業協議会で、健康・医療産業創出 に向けた「アクションプラン 2020(案)」の概要をまとめた。その概要を紹介する。
同プランは、健康寿命を延伸し、平均寿命との差の短縮・罹患しても制限を受けずに日常生活と治療を両立していくことを目的としたプランである。
具体的には、予防、進行抑制、病気との共生のための公的保険外サービスの活性化や公的保険サービ スとの連携強化による「予防・進行抑制・共生型の健康・医療システム」の構築、 公的保険外のヘルスケアサービス関連産業に新たな付加価値を創出できる、「総合的な健康・医療関連産業の振興」が目的として挙げられる。
この方策としては下記の3つが示されている。
①職域・地域・個人の健康投資の促進 ②適正なサービス提供のための環境整備 ③イノベーション・エコシステムの強化
①では、職域の健康投資の促進ために、企業等で健康経営度調査を実施し、顕彰制度や特に優れた企業には新たな呼称を創設する予定である。また、自治体による連携・支援や、地域の商工会議所や医療関係者等が連携して推進する健康 経営・健康づくり施策の促進を通じ、地域が推進する健康経営施策への連携・支援を図っていく。
健康経営施策への連携・支援の内容は、健康経営の取組を促進するためのセミナー等を通じて健康経営の実践に向けたノウハウの提供、企業等に対するインセンティブ、企業業績等と健康経営の関係性などを紹介することで、健康経営に取り組む企業等へのメリットを提示していく予定である。そして「企業の『健康経営』ガイドブック」との一体的な整理を行うことで、健康経営を実施している企業等が適切に評価される仕組み作りを検討している。また、予防・健康づくりを強化するために、保険者努力支援制度等の抜本的な強化やヘルスケアポイント等の個人インセンティブ付与につながる保険者の取組支援を位置づけている。
②では、品質が担保されているヘルスケアサービスの社会実装に向け、下記の5点が実施されている。
③については、ヘルスケア産業の創出のために、イノベーション支援など官民ファンドがリードして投資しながら、民間からも積極的な投資が起こるようなベンチャー支援策や 新規参入促進策を強化し、ヘルスケア分野における技術シーズの実用化・事業化を一体で支援することである。
2019年7月に発足された「Healthcare Innovation Hub」から資金調達のた めに官民ファンド等と、制度面の政策ツール MEDISO 等が連携し、ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト・WASS のようなビジネスマッチングイベントや地域・職域を こえた連携を促進することでビジネスパートナーや実証現場の掘り起こしを目指している。
上記のことから、
今後、生産年齢人口が減少していく2040年に向けて、健康寿命を延伸し社会 全体の活力を維持していくためには、介護事業所等も公的保険サービスだけではなく、公的保険外サービスとの連携や経営革新を視野に入れながら事業を運営していく必要がある。
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参考資料
・第1回 健康・医療新産業協議会
https://www.meti.go.jp/shin gikai/mono_info_service/ken ko_iryo/001.html
・「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部のとりまとめ」について
https://www.mhlw.go.jp/stf /newpage_05179.html
株式会社ビジケア代表取締役。看護師。訪問看護ステーション設立に参画した自身の経験をもとに、多数の事業所運営サポートを実施。看護師の視点で現場職員への教育や収益改善のサポートを行う。全国各地で年間700人を超える訪問看護ステーションの経営者・管理者向けに講義・セミナーを実施している。