既存加算における算定要件の見直しを含めると、変更点が過去最大クラスに多かった2024年度介護報酬改定。
ここまで主に人員基準、設備基準、運営基準に絞って、運営指導のチェックポイントを解説してきた(全サービス共通・概要編、通所介護編、居宅介護支援編)。
最終回の今回は、介護施設について改定の全体像を確認し、特別養護老人ホームと介護老人保健施設の運営基準上の変更点について点検していこう。
介護施設における24年度介護報酬改定への対応を点検するうえで、着目したいポイントは、生産性向上に向けた取り組みが広範囲に盛り込まれたことだ。まず、居住系サービスや多機能系サービス、短期入所系サービスとともに、3年間の経過措置付きで生産性向上委員会の設置が義務化された。
同時に、ICT化に取り組み、その改善効果に関するデータを提出することを評価する「生産性向上推進体制加算」が創設されている。介護施設では、生産性向上への取り組みが待ったなしの状況だ。
また、このほか介護施設に共通して、
特養の基本報酬は、総じて2.8%程度のプラスだった。
特養単独の変更点として特筆すべきものはなかった。強いて目新しい点を上げるなら、施設職員による透析患者の病院への送迎を評価する「特別通院送迎加算」の創設がある。
月に12回以上の透析患者の送迎が要件だが、往復で1回のカウントなので注意が必要である。
「配置医師緊急時対応加算」では夜間、深夜、早朝に加えて、今回、日中であっても、配置医師が通常の勤務時間外に駆けつけて対応を行った場合の区分が創設された。
介護老人保健施設は、報酬区分によって明暗が大きく分かれた。
在宅強化型が4.1%のプラスに対して、その他型が0.86%、基本型が1.1%と大きく差が開いた。中間の区分である加算型は、特養並みの改定率である。
老健の基本報酬ランクを決める評価指標のハードルが上がった。入所前後訪問指導割合、退所前後訪問指導割合の指標で基準が引き上げられたほか、支援相談員に社会福祉士の配置が無い場合は、点数が減額される。これによって、上位区分の基本報酬算定がこれまで以上に難しくなった。ギリギリの点数で強化型、超強化型を算定している施設でも、状況によってはランクダウンしたことが想定される。
また、老健では、療養型とその他型において先に挙げた多床室料の自己負担増が25年8月から始まっている。
加算に目を移すと、「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」では、入所者の居宅を訪問し生活環境を把握する要件が追加された。「短期集中リハビリテーション実施加算」では、入所時及び月1回以上ADL等の評価を行うことなどを要件とする上位区分が設けられている。また、「ターミナルケア加算」では、死亡日の前日及び前々日並びに死亡日の対応を高く評価する変更が行われた。
ここからは24年度改定で介護施設や居住系サービスにおいて義務化された。
(1)利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置 (2)口腔衛生管理の強化 (3)協力医療機関との連携体制の構築について、具体的に対応が必要となる内容を確認しよう。自施設でもぜひ点検してもらいたい。
※BCP減算、高齢者虐待防止減算、感染対策強化の義務化などについては、運営指導対策・サービス共通編の参照のこと。
※3年間の経過措置 ※生産性向上推進体制加算を算定する場合は、進行期から実施が必要。
小濱介護経営事務所 代表。一般社団法人日本介護経営研究協会専務理事。一般社団法人介護経営研究会 専務理事。一般社団法人介護事業援護会理事。C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問。