厚生労働省は7月8日に社会保障審議会 介護給付費分科会をオンラインで開催。2021年度の介護報酬改定に向けて、個別の介護サービスの議論が始まりました。今回は、6つの地域密着型サービスについて、前回改訂後の調査データが共有され、議論が進みました。
2019年度時点の請求事業所数は946事業所で、利用者数とともに、年々増加傾向にあります。
2018年度の報酬改訂のポイントとして、下記の2点がありました。
・同一建物等居住者へのサービス提供の減算
・オペレーターの兼務など人員基準の緩和
改訂後の調査によると、全体として黒字の事業所の割合が増加している中、同一建物減算の対象となる利用者が半数以上を占める場合は、黒字事業所の割合が低下していることがわかりました。
オペレーターの兼務による介護サービスの質への影響については、無回答を除くすべての事業所が、人員基準の緩和前と変わらず、影響なしと回答しています。
また、利用者家族など介護者への調査によると、訪問系サービスの利用回数が多いほど、問題なく就業を続けている割合が多くなることがわかりました。在宅介護の限界点を引き上げ、介護離職ゼロを目指すためのサービスとして、引き続き基盤を整備していく方針が示されています。
2019年度時点の請求事業所数は172事業所で、過去4年間で少しずつ減少しています。この理由として厚労省は、類似サービスである定期巡回・随時対応型訪問介護看護が代替していると説明しました。
委員からは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に集約していいのではという意見が複数あがりました。一方、夜間対応型訪問介護のメリットを検証した上で慎重に検討すべきという意見もありました。
2019年度時点の請求事業所数は5453事業所で、利用者数とともに、年々増加傾向にあります。しかし、収支差率は2.8%で、半数以上の事業所が赤字の状況です。委員からは、小規模であるがゆえの経営や人材確保の難しさについて指摘があり、経営の安定化のための施策を求める意見が複数あがりました。
2018年度の介護報酬改訂で創設された加算の算定率は低く、生活機能向上連携加算Ⅰが5.0%(Ⅱは2.4%)、若年性認知症利用者受入加算が3.8%、栄養スクリーニング加算が6.5%です。他の地域密着型サービスも同様に、算定率の低い加算が多くあるため、委員からは算定要件の見直し、事務処理の簡易化、加算自体の見直しなどについて意見があがりました。
2019年度時点の請求事業所数は531事業所で、利用者数とともに、年々増加傾向にあります。しかし、サテライト型の事業所は全国で9か所しかない状況です。
日本看護協会の岡島委員は、在宅介護の限界点の引き上げや、褥瘡の改善、排泄の自立改善など、サービス提供の効果に触れつつ、下記のような具体的な要望を提出しました。
・ターミナル期など通いによる入浴が難しい利用者のため、訪問入浴介護との併用を可能に
・医療的ニーズの高い利用者に対応できることから、空床利用による緊急ショートステイの単価引き上げ
・サテライト型事業所の設置促進のため、看護体制強化加算・訪問体制強化加算の算定要件を、本体事業所とサテライト型事業所の実績の合算で算定可能に
2019年度時点の請求事業所数は1万3674事業所で、利用者数とともに、年々増加傾向にあります。
論点のひとつである夜勤体制の人員基準について、委員の意見が集まりました。介護老人福祉施設等は2ユニット毎に1名以上である一方、認知症対応型共同生活介護では1ユニット毎に1名以上となっています。これに対して、見守りロボットの導入により、夜勤1名とオンコール対応の在宅宿直者の体制にしてはどうかという方針が示されました。
委員からは賛成意見が多くある中、オンコール対応の在宅宿直者が機能するのか疑問視する意見もあがりました。
2019年度時点の請求事業所数は5587事業所で、利用者数とともに、年々増加傾向にあります。「終の棲家」として、看取り対応などが求められる中、全体の約6割の事業所で看取りが行われています。看取りを受け入れない事業所の理由としては「夜間の看護職員の確保ができない」が最も多くなっています。
2021年度の介護報酬改定に向けて、今後も介護サービス別の議論が進みます。動向をチェックしておきましょう。
引用:第179回社会保障審議会介護給付費分科会【資料2】定期巡回・随時対応型訪問介護看護より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年7月9日掲載のものです。
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