厚生労働省は8月26日、社会保障審議会・介護給付費分科会に対し、EPA介護福祉士候補者と技能実習生について、一定の条件付きで就労開始直後から人員配置基準に算入できるようにすることを提案しました。これに対し、委員の意見は歓迎・容認派と、反対・慎重派に分かれ、このテーマは継続審議されることになりました。最新の外国人材の受け入れ状況や論点を整理します。
外国人介護人材受け入れ4ルートと受け入れ状況
外国人介護人材の受け入れについては現在、
- 経済連携協定(以下・EPA)を結んだ相手国であるインドネシア、フィリピン、ベトナムからの介護福祉士候補生
- 技能実習生
- 「介護」で在留資格を得る人
- 「特定技能」(2019年度に人材不足への対応を目的として創設)
の4つの枠組みが設けられています。 これらの在留資格には、それぞれに対象者要件や在留可能年数などが定められています。
このうち、厚労省が見直しを提案したのはEPA介護福祉士候補者と技能実習生の就労直後の取り扱いについてです。
この2つの制度で受け入れた外国人は、研修などを受けて現場で働き始めた後、6カ月間を経なければ、人員配置基準上の人員として認められません。6カ月という期間は、介護技能や業務上必要な日本語能力がある程度向上する時間として設定されています。
【画像】第212回社会保障審議会・介護給付費分科会資料より
しかし、一方で特定技能などでは、就労開始直後から算入が可能となっています。
そこで、厚労省は
- 受入先の施設を運営する法人の理事会で審議・承認するなど、適切かつ透明性の高いプロセスを経ること
- 上のプロセスを経て受入れを実施する際、都道府県等に報告すること
を条件に、EPA介護福祉士候補者と技能実習生も就労開始直後から人員として参入できるよう見直すことを提案しました。
このとき 厚労省としては就労後6カ月未満の外国人介護人材について、
- 報酬を日本人と同等以上の金額とする必要がある
- 他の従業者と同様、介護保険法に基づく介護サービスの実施状況等に対する運営指導(介護保険施設等指導指針等に基づく指導)を行う必要がある
ことを都道府県や事業者等に周知する姿勢も示しました。
なお、それぞれの受け入れ状況は中野響社会・援護局福祉基盤課長の報告によると
EPA介護福祉士候補者 :在留者数3,586人 うち資格取得者675人(2022年3月1日時点、国際厚生事業団調べ)
在留資格「介護」:在留者数3,794人(2021年12月末時点、入管庁調べ):
技能実習生:認定件数2万2,858件(2021年3月末時点、外国人技能実習機構調べ)
特定技能:(2022年4月末時点、入管庁調べ)8,484人
となっています。
意見は対立、賛成派「6カ月の未算定期間、制度活用に前向きになれない」
厚労省は今回の提案の理由を、
- 外国人介護人材の自覚の向上、施設内の均衡待遇などの処遇改善、サービスの質の向上への波及効果が生まれる可能性
- 関係団体からの要望
と説明しています。
提案に賛成する意見としては、「外国人人材は直接支払う賃金以外の経費がかかっている。そのうえ、6カ月の未算定期間がある制度の活用に前向きになれない事業者は多い」などがありました。
しかし、「人材不足への対応は、特定技能によって拡大をしていくべき」「制度の趣旨を踏まえれば安易に緩和することは反対」「根拠となる調査が不十分」などの意見も相次ぎ、検討は持ち越しとなりました。