このほど明らかになった特別養護老人ホーム(以下、特養)の2020年度の経営状況によると、赤字施設の割合が前年度比で微増しています。短期入所の利用率低下や人件費率の上昇が影響したほか、新型コロナウイルス感染症による経営への影響を受けた施設が全体の約4割を占めていました。
調査は、福祉医療機構(以下、WAM)が今年、公表したもので、WAMの貸付先特養の経営状況等について、事業報告に基づく調査を毎年実施・分析しているものです。対象は地域密着型を含む特養5,050施設で、運営主体はいずれも社会福祉法人であって公立のものは含まれません。
それによると、従来型・ユニット型ともに利用者1人1日あたりのサービス活動収益は300円程度上昇しました。
19年10月に導入された介護職員等特定処遇改善加算(以下、特定処遇改善加算)の算定率が3.9ポイント上昇していることが影響していると見られます。
【画像】WAM 2020年度(令和2年度)特別養護老人ホームの経営状況に関する調査結果より、以下同様
一方で、短期入所の利用率は従来型・ユニット型ともに新型コロナウイルス感染症の影響を受け、低下。さらに従事者1人当たりの人件費や利用者10人当たりの人件費率も上昇しています。結果として、サービス活動収益対サービス活動増減差額比率は前年度から0.5ポイント低下し、経営状況の悪化がみられました。
19年度から20年度にわたって比較ができた4,308施設の経営状況の推移をみると、ユニット型で入所利用率の上昇幅が大きくなっています。これは、例年、空床を引き起こしている季節性インフルエンザ の流行が少なく、施設での感染症対策の徹底も相まって入院する利用者が少なかったことや、医療機関側がコロナ以外の疾患での入院受入れを制限していた影響が考えられます。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。