2018年度の介護報酬改定で創設された介護医療院。福祉医療機構が2019年度決算を分析したデータによると、事業収益対事業利益率(事業利益率)は10.6%とほかの介護保険施設と比べて高い水準になるということがわかりました。 介護医療院は医療機関にとっても、診療報酬上で高い評価を得るために必要な「在宅」扱いになる(※2018年度診療報酬報酬改定で地域包括ケア病棟を評価する「在宅復帰先」の対象から老人保健施設が除外。報酬上高い評価を得るには在宅復帰した患者の割合が7割以上必要)ことから、病棟を運営している法人が退院先として選択するインセンティブが働くことが見込まれ、居住系サービスの事業運営にも影響する可能性があります。動向を確認しておきましょう。
まず、介護医療院の類型と厚生労働省の政策について簡単に振り返ります。介護医療院は、すでに廃止が決定されていた介護療養病床の受け皿として2018年4月の医療・介護報酬同時改定のタイミングで創設されました。国は、医療機関である病院と、病気や障害を抱えた高齢者に生活の場を提供していく介護施設との機能分化を進めており、介護医療院の創設もその一環として行われたものです。厚労省は介護医療院の役割について、「長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者を対象とし、『日常的な医学管理』や『看取りやターミナルケア』等の医療機能と『生活施設』としての機能とを兼ね備えた施設」と説明しています。
こうした理念を実現するために、介護医療院の施設基準では、入所者1人あたりの床面積や廊下幅が医療機関などと比べて広く設定されている(介護療養病床などから転換した介護医療院には緩和措置有り)ほか、プライバシーの確保を配慮した環境を用意することなどが定められています。 また、介護医療院の施設類型は入所者の医療が必要な度合いの高さやその割合、人員配置によって「I型」と「II型」に分かれています=以下の表参照=。
*【表】第190回社会保障審議会介護給付費分科会資料より抜粋
創設されて当初は介護療養病床からの転換促進のため、2020年度までの期限付きで介護報酬上での転換支援策(移行定着支援加算・93単位/日)が用意されていました。このほかにも、厚労省の予算事業として介護医療院への転換に関わる先進事例を共有する機会を提供したり相談窓口を設置したりするなどの施策が展開されています。
一方で当の介護療養型医療施設は、厚労省の調査において、介護療養病床の廃止期限である2023年度末になっても23.7%が「介護療養型医療施設に留まる」との考えを示しています=グラフ=。
*【グラフ】第190回社会保障審議会介護給付費分科会資料より抜粋
介護療養病床からの転換を妨げている要因について業界団体(日本慢性期医療協会、介護医療院協会)の代表者らは、自治体の対応にも積極性やスピードの面でばらつきがあることなどを指摘しています。ただ、2021年度介護報酬改定では移行定着加算の廃止のほかに介護療養型医療施設の基本報酬の引き下げなどの対応が取られたため、これまで状況を伺っていたと見られる医療機関の転換が進んでいく可能性があります。
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