第195回社保審・介護給付費分科会が12月2日に開かれ、2021年度介護報酬改定の取りまとめに向けた、運営基準の改正事項案が示されました。施設系サービスに関連した改正案では、口腔衛生管理体制の整備や栄養ケア・マネジメントを基本サービスとして実施すること、無資格者の認知症介護基礎研修の受講を義務化することなどが提示されています。
口腔衛生管理の取り組みが広がる中、入所後に歯科医療管理が実施されていない者が3割程度いる現状が明らかになっています。厚労省はこうした背景や専門家の意見を踏まえ、「口腔衛生管理体制を整備し、入所者ごとの状態に応じた口腔衛生管理を行うことを求める」方針を示しました。
また、栄養ケア・マネジメントの取り組みをより一層の強化を推進する観点から、栄養ケア・マネジメントを基本サービスとして実施することや、管理栄養士の配置要件などについて協議されてきました。
これまでの議論を踏まえ、「栄養ケア・マネジメントを基本サービスとして実施し、栄養士又は管理栄養士の配置を求めつつ、栄養管理を計画的に行うことを求める」改正案を示しました。いずれの改正についても、3年間の経過措置期間を設けることを明記しています。
人材確保や職員定着の観点から、介護保険施設の人員配置基準の見直しについても改正案が示されました。具体的には、「従来型とユニット型を併設する場合において、入所者の処遇に支障がない場合、介護・看護職員の兼務を可能とする」ことが提示されています。
介護保険施設のリスクマネジメントに関しても、安全対策をより恒常的なものとする観点から、「事故発生の防止のための安全対策の担当者を定め、発生した場合には組織的に対応可能な体制を構築しておくことを義務付ける」改正案が示されました。施行にあたっては6月の経過措置期間を設ける方向性もあわせて提示されています。
厚労省は介護に関わるすべての人の認知症対応力を向上させていくことを目的とし、医療・福祉関係の資格を有さない「無資格者」について、認知症介護基礎研修の受講を義務化する改正案を示しました。研修については全面e-ラーニング化し、オンラインでの受講を可能とする環境整備についても検討されています。
全国老人クラブ連合会の正立斉氏は、基礎研修受講の義務化に賛成の立場を表明したうえで、「対面型の研修であれば演習において双方向の学習効果が期待できるが、e-ラーニングではどう対応するのか」と、全面e-ラーニング化での受講における学習効果の担保について疑問を呈しました。
これに対し、厚労省は「全員に受けてもらうという手間の部分と、実効性をどう確保していくのかという両面をにらみながら、意味のある研修を受けてもらうためにカリキュラムを見直していく」と回答しています。受講の義務化についても、3年間の経過措置期間が設けられる方針です。
本分科会にて提示された運営基準に関する改正案は、概ね決定方向にて取りまとめられる見込みです。一方、個室ユニット型施設におけるユニット定員を「15人以下」へ緩和する案については、多くの委員から反対意見があがったため、田中滋分科会長の判断によって、決定が次回以降へ持ち越しとなりました。
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12月の取りまとめに向け、引き続き今後の動向をチェックしておきましょう。
引用:第194回社保審・介護給付費分科会「自立支援・重度化防止の推進」、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について」、「地域包括ケアシステムの推進」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。