2021年度介護報酬改定に向けて、全22回に渡り議論されてきた介護給付費分科会。その審議報告が、2020年12月23日に厚労省のホームページで公表されました。本記事では【居宅介護支援】に関する「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告」の内容について、加算や報酬に関わる詳細部分をまとめて整理していきます。
令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(厚労省ホームページ)
ケアマネジャー1人あたりの取扱件数について、40件以上の場合は40件目から、60件以上の場合は60件目からそれぞれ単位数が下がる現行の逓減制を緩和する見直しが盛り込まれました。
適切なケアマネジメントの実施を確保しつつ、経営の安定化を図る観点から、一定のICT(AI を含む)の活用又は事務職員の配置を行っている事業者については、逓減制の適用(居宅介護支援費(Ⅱ)の適用)を「45件以上の部分から」とする見直しが実施されます。
この取扱いを行う場合の逓減率(居宅介護支援費(Ⅱ)及び(Ⅲ)の単位数)について、メリハリをつけた設定とすることも明記されています。また、特定事業所加算における「ケアマネジャー1人当たりの受け入れ可能な利用者数」については、この取扱いを踏まえた見直しが行われます。
さらに、逓減制におけるケアマネジャー1人当たりの取扱件数の計算に当たり、現行では、事業所が自然災害や感染症等による突発的な対応で利用者を受け入れた場合は、例外的に件数に含めないこととされています。これについて、地域の実情を踏まえ、事業所がその周辺の中山間地域等の事業所の存在状況から、やむを得ず利用者を受け入れた場合についても例外的に件数に含めない取扱いを可能とする見直しも行われます。
居宅介護支援事業所の経営の安定化を図るとともに、質の高いケアマネジメントの一層の推進、公正中立性の確保等を図る観点から、「特定事業所加算」に関して以下の3項目の見直しが実施されます。
<特定事業所加算の見直し>
① 必要に応じて、多様な主体等が提供する生活支援のサービス(インフォーマルサービスを含む)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していることを要件として求める。
② 小規模事業所が事業所間連携により質の高いケアマネジメントを実現していくよう、事業所間連携により体制確保や対応等を行う事業所を評価する新たな区分を創設する。
③特定事業所加算(Ⅳ)について、加算(Ⅰ)から(Ⅲ)までと異なり、病院との連携や看取りへの対応の状況を要件とするものであることを踏まえ、医療と介護の連携を推進する観点から、特定事業所加算から切り離した別個の加算とする。
また、ケアマネジメントの公正中立性の確保を図る観点から、事業者に、以下の2項目について、利用者に説明を行うとともに、介護サービス情報公表制度において公表することを求める新たな対応も盛り込まれています。
<説明義務の追加>
① 前6か月間に作成したケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の各サービスの利用割合
② 前6か月間に作成したケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の各サービスごとの、同一事業者によって提供されたものの割合
利用者が医療機関において医師の診察を受ける際にケアマネジャーが同席し、医師等と情報連携を行い、当該情報を踏まえてケアマネジメントを行った場合に、その取り組みを評価する新たな加算が創設されます。
看取り期において、居宅サービス等の利用に向けてケアマネジャーが利用者の退院時等にケアマネジメント業務を行ったものの、利用者の死亡によりサービス利用に至らず算定ができないケースについて、適切なケアマネジメントの提供や医療と介護の連携を推進する観点から、以下の見直しが実施されます。
・居宅サービス等の利用に向けてケアマネジャーが利用者の退院時等にケアマネジメント業務を行ったものの利用者の死亡によりサービス利用に至らなかった場合に、モニタリングやサービス担当者会議における検討等必要なケアマネジメント業務や給付管理のための準備が行われ、介護保険サービスが提供されたものと同等に取り扱うことが適当と認められるケースについて、居宅介護支援の基本報酬の算定を可能とする見直しを行う。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。