要介護認定に関わる事務や、介護保険の被保険者証などの電子的なやり取りを可能にする「介護情報基盤」。2026年4月からの運用開始が目標とされてきましたが、自治体のシステム的な対応が困難であることからスケジュールは流動的になりそうです。介護事業者では、マイナンバーを読み取る機器の導入や利用者情報を扱うためのセキュリティ対策が必要になるため厚生労働省は支援を実施する方針です。社会保障審議会・介護保険部会での検討内容について、直近の状況をお伝えします。
*初回の議論・検討内容についてはこちら
介護情報基盤とは、市町村、介護事業所や医療機関などが介護サービスの利用者にまつわる情報を電子的に共有・活用できるようにするためのプラットフォームです。
この基盤が構築されることで、介護保険の被保険者証に記載されている情報や、主治医意見書に記載された情報などのやり取りをペーパーレスでできるようになり、業務効率化が進められることなどが期待されています(画像参照。2枚目の図表中、赤枠内が新たに関係者間で情報が電子的に共有されるようになる情報の範囲)。
介護事業所では「介護保険資格確認等WEBサービス」を経由して介護情報基盤に格納されている情報が閲覧できるようになる構想です。
介護情報基盤は医療機関、介護施設、公衆衛生機関、自治体それぞれが保存・管理している患者の情報を集約して閲覧共有・管理するためのシステム「全国医療情報プラットフォーム」の中で稼働する、情報基盤として構想されていて、医療と介護それぞれに関するデータがシームレスにやり取りできるようになることが将来的に目指されています。
(【画像】「介護情報基盤」による情報共有のイメージ(9月19日の社保審・介護保険部会資料より。以下同様。)
介護情報基盤の運用開始に向けたスケジュールについて、7月の部会では、厚生労働省から”26年4月の全国展開を目指す”というスケジュールが示されていました。しかし、この時、自治体を代表する立場の委員からは「期日に間に合わない保険者が出ることは確実」という指摘が出てました(※リンク先は前回会合についてのレポート記事)。
そこで、9月に開かれた会合では、全国の市町村を対象とした調査結果が示されました。
この結果によると、要介護認定事務の電子化など、介護情報基盤に関する取り組みそのものには、約7割の自治体が前向きであるものの(画像中③のグラフ)、25年度末までに移行することについては、「困難」と回答した自治体が半数を超えており、人口規模が大きい自治体でほどその割合が高くなっています(①、②のグラフ)。
説明に当たった老健局の堀裕行老人保健課長は、正式な対応スケジュールは「引き続き検討する」こととしています。
9月の会合での中心的な議題は”介護事業所等への支援の在り方”でした。
介護情報基盤を活用して各種の情報を共有するためには、それぞれの介護事業所で「利用者のマイナンバーカードを読み取る機器」や「セキュリティ対策ソフト」等の準備が必要となります。また、医療機関が主治医意見書を共有するには、電子カルテや文書作成システムに新たな機能を搭載し、自治体とのやり取りができる仕様でデータを送信する必要があります。
このような準備について、厚労省は介護事業所や医療機関を支援する方針を明らかにし、部会のメンバーに意見を求めました。
委員からは財政的な支援はもちろん、特に小規模の事業所における職員に対して操作方法のようなスキル習得の支援などソフト面でのサポートの実施を求める声などがありました。
一方で、国策としてデータ連携に必要な環境整備を進めるためには、補助金などの設定だけでなく、「介護報酬上の加算の要件化ということもあっていい」(佐藤主 光委員・一橋大国際・公共政策大学院教授)といった指摘もなされています。
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