第193回社保審・介護給付費分科会が11月16日に開かれ、2021年度の介護報酬改定に向けた具体的な論点と対応案が示されました。小規模多機能型居宅介護(以下、小多機)に関しては、要介護度別の基本報酬の見直し案や、訪問体制強化加算の適正化などが議題となり、専門家から賛否の声があがりました。
在宅限界を高める地域の拠点としての役割が期待されている小多機ですが、経営状況が厳しい点や要介護ごとの報酬設定の見直しについて、以前から議題となってきました。経営悪化の背景には、要介護度ごとの報酬設定がアンバランスであり、要介護1・2と要介護3~5の間で大きな差があることが指摘されています。
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本分科会では最新データとして、2020年度経営実態調査結果を提示。小多機の収支差率(2019年度決算)は3.1%であり、40.9%の事業所が赤字経営である現状が示されました。
これらを踏まえ、厚労省は要介護1・2の利用者について基本報酬を引き上げる対応案を提示しました。全国老人福祉施設協議会の小泉立志氏は賛成しつつも、前出に示した基本報酬グラフについて「区分支給限度額を超えない程度に緩やかにするべき」とし、見直し案に意見を述べました。
一方、日本経済団体連合会の間利子参考人は「全サービス平均(収支差率)が2.4%のところ、小多機は3.1%。6割の事業所が黒字だということも踏まえると、基本報酬の見直し案には賛同しがたく、“利用者が少ない等の地域ニーズの把握”や、“黒字事業所の経営実態”を踏まえた小多機のあり方を検討するべき」と、反対意見を述べました。
本分科会では、小多機の訪問サービスを積極的に促進することを目的とし、現行の訪問体制強化加算をベースに、1月あたりの延べ訪問回数が一定数以上の事業所を、上乗せ評価する加算の新設が提案されました。併せて、訪問回数が一定以下の事業所については報酬を減算する案も提示されました。
検討案について、日本介護福祉士会副会長の藤野裕子氏は「本質的には訪問回数の多い少ないではなく、利用者にとっての必要性に見合った訪問となっているかの評価が必要」と苦言を呈しました。2021年度の介護報酬改定に向け、今後の議論に注目が集まります。
引用:第193回社保審・介護給付費分科会「小規模多機能型居宅介護の報酬・基準について」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。