2021年度介護報酬改定に向け、10月9日に開かれた社保審・介護給付費分科会にて各サービス種別の論点と方向性が議論されました。小規模多機能型居宅介護(以下、小多機)に関する議論では、経営に影響する報酬面での検討が目立ちました。各委員からの意見とともに、検討内容と今後の見通しをお伝えします。
地域の拠点となり在宅限界を高めることが期待される小多機ですが、実際の経営はかなり厳しい状態であることが本分科会の資料にて浮き彫りになりました。2019年度の経営概況調査の結果より、全体の51.8%もの事業所が赤字経営となっています。
赤字経営の要員として、要介護1・2と要介護3~5の間で大きな差がある報酬設定のアンバランスさが着目されました。現行では要介護1と要介護3の報酬差は11,793単位/月となっています。
さらに、小多機の新規契約者は要介護1・2が54.9%を占める一方、契約終了者は要介護3以上が55.8%と、利用者の入れ替わりが経営に大きく影響していることが分かります。
この現状に対して厚生労働省は、要介護度ごとの報酬設定のバランスを見直す検討を提案しました。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究所教授の堀田聰子氏は「これからますます小多機の役割が高まっていくことが期待される。その時に他の包括型サービスと比べ、要介護1・2の報酬がぐっと低い。全体のバランスを見直す時期にきている」と発言。他の委員からも報酬の見直し検討に賛同する意見が多く聞かれました。
介護度1・2への報酬引き上げについて慎重な意見として、日本医師会の江澤和彦氏は「もともと中重度の要介護者を在宅で支えるという目的のために小多機は創設された。利用者の実態に報酬を合わせるのではなく、小多機の理念や機能を踏まえた上で検討するべき」と提言しました。
本分科会では訪問サービスの実施状況に関して、1事業所あたりの月間訪問回数「0回」の事業所が4.7%いる一方、「400回以上」の事業所が15.2%を占める点についての検討もなされました。
引用:第187回社保審・介護給付費分科会「小規模多機能型居宅介護の報酬・基準について(検討の方向性)」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年10月13日掲載のものです。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。