10月30日、オンラインで第190回社保審・介護給付費分科会が開かれ、「介護従事者処遇状況等調査」の結果が報告されました。この調査結果は2021年度の介護報酬改定に影響を与える重要なデータです。特定処遇改善加算の算定率や、加算分の分配の実態、職員の賃金の変化について見ていきましょう。
年々深刻さを増している介護職員の人手不足。その改善策のひとつとして2019年10月からスタートしたのが、スキル・経験のある職員の処遇改善を目的とした介護職員等特定処遇改善加算です。
2020年2月分の調査では、特定処遇改善加算の算定率は63.3%でした。内訳を見ると、加算Iが34.7%、加算IIが28.6%となっています。処遇改善加算を算定している事業所のうち、36.7%が特定処遇改善加算を算定していないという結果となりました。
特定処遇改善加算の届出を行わない理由としては、職種間や介護職員間の賃金バランスがとれなくなることや、事務作業の煩雑さなどが挙げられています。
職員への分配方法の実態についても見ていきましょう。特定処遇改善加算を配分した職員の範囲は「経験のある介護職員」が93.4%、「他の介護職員」が85.4%、「その他の職種」が60.0%でした(複数回答)。「その他の職種」の上位4職種は、生活相談員が69.1%、看護職員が65.3%、事務職員が64.4%、介護支援専門員が47.1%となっています。
スキル・経験のある介護職員への分配状況としては、「月額平均8万円以上の賃金改善を実施」が10.3%、「改善後の賃金が年額440万円以上となる賃金改善を実施」が38.6%となりました。
特定処遇改善加算I・IIを取得している施設・事業所の介護職員(月給・常勤の者)の平均給与額は32万5,550円となり、前年度の調査と比較すると、1万8120円の増加。勤続年数10年以上の介護福祉士(月給・常勤の者)の平均給与額は36万6,900円となり、2万740円の増加という調査結果が示されました。
給与の引き上げ方法については、手当の引き上げ・新設が54.0%と最も多くなっています。賃金水準の引き上げではなく、手当や賞与での対応が多いことについて、日本労働組合総連合会の伊藤委員から懸念の声があがりました。
調査結果に対して委員からは、賃金改善の効果について評価をしつつも、特定処遇改善加算を算定していない事業所が一定数あることに対して、算定率をあげていくための検討を求める意見が多く上がっています。
引用:第190回社会保障審議会介護給付費分科会「令和3年度介護報酬改定に向けた各種調査の公表について」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年11月6日掲載のものです。
ライター歴8年、介護業界取材歴5年。介護業界の経営者や現場責任者、介護関連施設への取材を重ねてきました。介護業界を支える皆さまの役に立つ情報発信を心がけています。