処遇改善加算の活用が一般的となり、キャリアパスを作成していない介護事業所は少なくなってきた感があります。一方で、キャリアパスを作ったけれども、上手く運用できないといったといった悩みを抱えている介護事業所も増えてきています。
キャリアパスは基本的に、人事制度を構成する【等級制度】、【評価制度】、【賃金制度】、【育成制度】をシンプルかつ可視化したものといえます。
山形県が関係機関・団体の御協力を得て作成し、一般に公表している小規模法人・在宅事業所版のキャリアパスモデル例を参考にして人事制度を考えてみましょう。
(出典:「山形県介護サービス事業所・施設のモデル給与・服務等規程について」より)
等級制度に関わる項目は、「職位」、「職責(役割)」、「対応役職」、「職務内容」となります。 評価制度に関わる項目は、「求められる能力」です。 賃金制度に関わる項目は、「給与」です。 育成制度に関わる項目は、「任用の要件」です。
4つの制度ごとに項目を分けてみると、キャリアパスが人事制度の集大成であるということがより理解しやすくなります。
それぞれの制度と制度に関わる項目の関係を整理することで、キャリアパスを使いこなすことができるのです。
介護スタッフが、上位の職責を担い、職責に見合った給与を手に入れるためには、キャリアパスに明示された任用要件をクリアする必要があります。キャリアパスがうまく機能していれば、任用要件をひとつひとつクリアすることで、昇進、昇格、昇給に繋がり、専門職としての能力が高まります。介護スタッフが目指す、職位、職務に到達し、給与が上がれば、離職者がなくなり、介護事業所の経営が安定します。
ところが、『職責や人事評価が給与と見合っていない』、『キャリアパスの基準と職務遂行能力に乖離がみられる』など、キャリアパスの運用に悩んでいる介護事業所も存在しています。そこで、キャリアパス表の任用要件に着目して改善ポイントを探ってみました。
Office SUGIYAMA グループ代表。採用定着士、特定社会保険労務士、行政書士。1967年愛知県岡崎市生まれ。勤務先の倒産を機に宮崎県で創業。20名近くのスタッフを有し、採用定着から退職マネジメントに至るまで、日本各地の人事を一気通貫にサポートする。HRテックを精力的に推進し、クライアントのDX化支援に強みを持つ。著書は『「労務管理」の実務がまるごとわかる本(日本実業出版)』『新採用戦略ハンドブック(労働新聞社)』など