2024年介護報酬改定に向けた検討事項の中でも行方が注目されているものの一つが、”新しい複合型サービスの創設”です。訪問介護と通所介護を組み合わせた新しいサービス類型を創設するという提案がなされていますが、これに対して疑問を呈する意見も数多く示され、24年度改定での対応が実施されるかどうかの可否について見通し辛くなってきました。
そもそもこの、”複合型サービスの創設”は事業者にとってどのようなメリットや懸念事項があるのでしょうか。社会保障審議会・介護給付費分科会でこれまでに行われてきた検討をもとに整理します。
「複合型サービス」とは、地域密着型サービスの類型の一つで、居宅要介護者に対して複数の介護保険サービスを組み合わせて一体的に提供するサービスのことをいいます(介護保険法第8条23)。
この「複合型サービス」として、現在は厚生労働省令(介護保険法施行規則第十七条の十二)に「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を組み合わせた「看護小規模多機能型居宅介護」が認められています。
2024年度介護報酬改定で対応すべき課題の一つに、介護ニーズが急増する大都市部での介護サービスの基盤整備があり、この手段として”既存資源を活用した、複合的な在宅サービスの整備”の重要性が指摘されていました。ここで、新たな複合型サービスの類型として、訪問介護と通所系サービスを組み合わせることが示唆されています。
8月末の同分科会(第222回社会保障審議会・介護給付費分科会)で改めてこの「新しい複合型サービス」をテーマとした際、厚生労働省は
ことをデータで示し、特に訪問介護のニーズと人材確保の実態が乖離していることを強調しています。
この日、厚労省は、訪問介護の利用者のうち、46.7%がデイサービス(通所介護または地域密着型通所介護)を併用していることを示すデータも共有しています。
(【画像】第222回社会保障審議会・介護給付費分科会資料3より(以下同様))
また、事業者側を見ても、通所介護事業所を運営する法人の55.4%が訪問系サービスの事業所を運営していることがわかります。訪問介護事業所を運営する法人の場合は、53.4%が通所系サービス事業所を運営しています。
さらに、双方の事業所はほとんど併設されていることも読み取れます。
令和4年度老人保健健康増進等事業では、通所系サービスと訪問系サービスの両方に職員が勤務している法人に、そのメリットも尋ねています。
それによると、
ことなどが挙げられています。
新しい複合型サービスの類型ができれば、例えば、デイサービスの職員による訪問が特別な資格なしでも認められるなど、現状より柔軟な人員配置が認められる可能性が高く、事業者は効率的な運営ができるようになる可能性があります。
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