介護職の賃金引き上げの行方は?10月以降の対応についても検討開始

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2022年から新たに実施される介護職や看護職らの賃金引き上げについて、その枠組みが見えてきました。同年2月から9月までの介護職の賃上げ月額9,000円相当分の介護事業所への手当は、補助金で対応される見通しです。ただし、今回の政策でも、居宅介護支援事業所に勤務するケアマネジャーや、訪問看護事業所などに所属する職員は処遇改善の対象から外れる方向で調整が進んでいます。

また、10月以降の対応は、仮に臨時の介護報酬改定が実施される場合、社会保障審議会・介護給付費分科会でその詳細を年明け以降に議論していくことになります。

12月8日に開かれた同分科会での厚生労働省による説明を中心に、直近の動きを整理します。

介護職の賃上げ月額9千円相当は2022年2月~9月まで補助金で手当

11月19日に閣議決定した政府の経済対策には、介護・障害福祉職や保育士らの賃上げは現行収入(厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると介護職の場合は月収29.3万円)の3%程度に当たる月額9,000円、看護現場で働く人については、現行収入1%程度に当たる月額4,000円の引き上げが行われることが盛り込まれています(看護は段階的に3%程度引き上げていく)。

この方針を受け、2021年度の補正予算では、これらの職種の賃上げに 1,655億円が投じられることになっています。※11月26日に閣議決定。臨時国会で審議の上成立)。

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【画像】令和3年度厚生労働省補正予算案の概要より抜粋

介護現場で働く人の賃上げには、このうちおよそ1,000億円が当てられる予定です。

対象となるサービス・職種や手続きについては、後日開かれた社保審・介護給付費分科会で、現在の調整が進んでいる内容として説明がありました(後述)。

この賃上げについて、「他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める」というルールは、既にこの時点で示されています。

なお、看護については、「地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関」(救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関、三次救急を担う医療機関)に勤務する看護職員らが当面の収入の引き上げ対象とされており、その先の対応は今後の検討事項となっています。

また、この際には、看護補助者、理学療法士・作業療法士等のコメディカルの処遇改善に充てることができるようになっています。

居宅介護事業所のケアマネジャーらは対象外の方針、介護給付費分科会で正式に報告

12月8日に開かれた社保審・介護給付費分科会では、厚労省の職員から正式に、前述の措置は、2022年9月までの対応であり、交付金(補助金)として介護事業所に手当される方針であるとの説明がありました。

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【画像】第204回社保審・介護給付費分科会資料(2021年12月8日開催)より

問題はその対象ですが、現在、「介護職員処遇改善加算」のIからIIIのいずれかの区分を算定する事業所が補助の対象となることで調整が進んでいることも示されました。

補助の対象となるサービス事業所が都道府県に申請することで、補助金が支給される予定です。

この仕組みでは、同加算を算定することができない、居宅介護支援事業所のケアマネジャーをはじめ、訪問看護や訪問リハビリテーション、福祉用具貸与事業所などの職員らは今回の補助の対象外となります。

この日の介護給付費分科会では、濵田和則・日本介護支援専門員協会副会長らがこの方向性に遺憾の意を示したうえで、10月以降の対応も含め、これらの職種を賃上げの対象とするよう求めました。

また、具体的な補助金額に関しては、対象サービスごとに常勤換算した介護職員数に応じて各事業所への補助金が支給される方針であると説明されました。
この具体的な計算方法についても委員から質問がありましたが、現時点では「できるだけ早いタイミングで示したい」との回答に留まっています。

10月以降の賃金引き上げと財源・手当ての方法が今後の焦点に

22年10月以降、介護職や看護師らの賃上げをどのように継続していくかについては、22年度の予算編成過程で改めて検討されることになります。

その舞台は首相官邸で開かれる「公的価格評価検討委員会」です。12月3日に開かれた2回目の同委員会でもすでに10月以降の対応について検討が始まっており、

・職種間の均衡をどのように考慮するか
・労働時間や経験年数、勤続年数等の要素を考慮すべきか

が論点となりました。

手当の手法や対象の範囲、財源は現時点では未定ですが、仮に、政府が10月以降の賃金引き上げを介護報酬で対応すると決定した場合は、具体的な要件などについて、年明け以降に社保審・介護給付費分科会で議論されることになります。

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