12月2日に開かれた第195回社保審・介護給付費分科会にて、2021年度介護報酬改定の取りまとめに向けた、運営基準の改正事項案が示されました。居宅介護支援に関連した改正案では、新たに利用者への説明が義務付けられる事項の追加や、生活援助回数の多い訪問介護について、事業所単位での点検・検証の仕組みを導入することが提示されています。
過去の介護給付費分科会において、居宅介護支援事業所の公正中立性の確保や資質の向上、業務負担軽減等について度々協議され、事業所内での取り組みや研修体系の見直し等が進められてきました。また、居宅介護支援事業所の公正中立なケアマネジメントのための取組みの一環として、運営基準に記載する利用者への説明項目を明示し、その内容を介護情報公表システムの運営情報に掲載することも提案されています。
上記の提案を踏まえた上で、厚労省は2021年度介護報酬改定の取りまとめに向け、以下の2点に関して、新たに利用者への説明を義務付けることを明記しました。
●前6か月間に作成したケアプランにおける訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与(販売)の各サービスの割合
●前6か月間に作成したケアプランにおける訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与(販売)の各サービスごとの、同一事業者によって提供されたものの割合
この改正案について、日本労働組合総連合会の伊藤彰久氏は「ケアプランを提案するたびに前6か月のデータを示して説明する、という労力を考える必要がある」と意見を述べました。他の委員からの目立った反対意見はなく、概ね上記の改正案に沿いながら議論が進められると思われます。
訪問介護の生活援助中心型サービスについて、統計的に見て通常よりかけ離れた回数をケアプランに位置づける場合における、市町村への届出頻度や検証方法が協議されてきました。第194回分科会では、ケアマネジャーや市町村の事務負担に考慮し、届出頻度を「年1回」とする提案もなされています。
関連記事:生活援助回数の多い訪問介護 ケアプラン届出を年1回へ見直し、事業所単位の点検導入を提案(第194回分科会)
併せて、ケアプランの届出回数が少なくなる代わりに、居宅介護支援事業所の点検・検証の仕組みを導入する対応案も示され、本分科会にて改正案として明記されました。具体的には、「区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ、訪問介護が利用サービスの大部分を占める等のケアプランを作成する居宅介護支援事業者を事業所単位で抽出するなどの点検・検証の仕組みを導入する」と明記されています。
今後は提示された運営基準等の改正案に沿って、介護報酬改定の取りまとめに向けた議論が進む見込みです。
引用:第190回社保審・介護給付費分科会「居宅介護支援・介護予防支援の報酬・基準について(検討の方向性)」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。