10月15日に行われた第188回社保審・介護給付費分科会で通所リハビリテーションについて多岐にわたる議論が行われました。
これまでの分科会では、通所リハの大規模事業所の減算について「規模が大きく経営効率がいいというだけで、質の評価なしに減算が適用されてしまう」等の指摘があり、今後も減算を続けていくのか検討すべきとの意見が出ていました。
厚労省は今回の分科会で、通所リハの基本報酬について、事業所の経営努力を損なわないように、経営実態を踏まえて見直しを行うことについて議論を求めました。
ここで押さえておきたいのは、スケールメリットが働くことで、事業規模の大きさと収支差率が比例するという状況です。延べ利用者数の増加に伴って、収支差率がプラスになっています。
しかし、2018年度の収支差率をみると「751~900人」は5.5%であるのに対して、「901人以上」は3.6%と収支差率が逆転しています。これは、前回の介護報酬改定の「3時間以上のサービス提供に係る基本報酬等の見直し」と「規模ごとの基本報酬の見直し」が影響していると考えられます。
健康保険組合連合会の河本滋史氏は、事業所の規模拡大による経営の効率化に向けた努力が損なわれないようにすることを要望しました。
日本経済団体連合会の井上隆氏は、スケールメリットからのサービスの質の向上や職場環境の向上など、大規模化のメリットを挙げた上で、事業規模ごとに職員の処遇や利用者の満足度を調査し、適正な事業規模を調査すべきだと指摘しています。
リハビリテーション計画書と個別機能訓練計画書の書式について、項目を共通化する案が示されました。この2つの計画書には下記の表の通り、共通の項目が多くなっています。また、リハビリテーション計画書固有の項目については簡素化を図る方針があわせて示されました。委員からは特に異論はなく、業務効率化の方向で進みます。
2018年度の介護報酬改定で、VISITの活用や医師の詳細な指示の明確化、ICTを活用したリハビリテーション会議への参加などの点が改正されたリハビリテーションマネジメント加算。
厚労省は今回、VISITへのデータ提出とフィードバックによるPDCAサイクルに沿った取り組みの推進やICT機器の活用、報酬体系の簡素化と事務負担軽減等の観点からの見直しについて議論を求めました。
これに対し、全国老人保健施設協会の東憲太郎氏は「VISITを様々な要件に拡大していく際には現場の負担を考えないと算定率が上がらない」と指摘しています。
社会参加支援加算と生活行為向上リハビリテーション実施加算については、加算自体の意義にまで議論が及びました。委員からは、「社会参加」とは何を指すのか曖昧で利用者に説明が難しいという意見や、アウトカム評価を設けるべきという指摘が出るなどしています。
また、生活行為向上リハビリテーション実施加算については、社会参加支援加算との線引きが難しいという意見や、創設から6年となっても算定率が1%以下であることから、廃止についても意見があがりました。
引用:第188回社会保障審議会介護給付費分科会「通所リハビリテーションの報酬・基準について」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年10月20日掲載のものです。
ライター歴8年、介護業界取材歴5年。介護業界の経営者や現場責任者、介護関連施設への取材を重ねてきました。介護業界を支える皆さまの役に立つ情報発信を心がけています。