マスクの着用に関する政府方針など、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策は”個々の判断”に委ねられているところです。高齢者施設等での面会や外出の制限についても、それぞれの現場で判断や対応に悩まれているでしょう。入所者の心身の健康への悪影響を懸念し、厚生労働省は高齢者施設等での面会再開を推進していることをご存知でしょうか。
ウィズコロナ社会での面会のポイントや留意点、対面面会を再開した事業所での取り組み事例など、厚労省がこれまでに示している方針を整理してご紹介します。
厚労省が発信している啓蒙ツールを監修した東北大学大学院の小坂健教授)は、面会機会の減少が施設入所者に与える悪影響について下記のように述べています。
2023年5月8日からは新型コロナウイルス感染症を5類感染症に位置付ける方針が決定されたことも踏まえ、厚労省は感染リスクを最大限に考慮したうえで対面面会を再開することを推奨しています。
なお、新型コロナの感染症法上の位置付けの変更に伴って医療現場では必要な対策や措置の見直しが段階的に図られる予定です。3月上旬を目途に具体的な方針が示される予定ですが、介護施設での対応にも影響するかもしれません。
*参考:首相官邸サイト「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更等に関する対応方針について」、加藤勝信厚生労働相の定例記者会見概要(3月3日)
高齢者施設等での面会を再開するにあたり、厚労省は留意点として下記の内容を通知しています。
一方で、感染リスクを最小限に留めることを目的とした対策の継続も訴えています。
具体的には、各地域での感染状況や対策方針や利用者・面会者の体調等を考慮して管理者が面会実施の方法を判断すること、入所者・面会者のワクチン接種や検査陰性の確認を面会実施の検討材料とすること、対面での面会が難しい場合はオンラインでの実施を検討することなどが含まれます。
*参考:厚労省「社会福祉施設等における面会等の実施にあたっての留意点について (2022年11月24日付)」
*関連記事:新型コロナウイルス感染者減少に伴う社会福祉施設等での面会及び外出の実施についての留意点の見直し事項
厚労省が高齢者施設職員向けに作成した動画やリーフレットでは、実際に対面面会を再開した施設における具体的な取り組み事例も提示しています。新型コロナの感染拡大以前に実施していた面会方法に「戻す」のではなく、新しい生活様式を踏まえた「withコロナ」下での対面面会に対する取り組みを実施していくことが求められます。
実際の事例をもとに、各施設や事業所への取り入れを検討していきましょう。
このほか、面会後一定期間内で発症した場合に備え、氏名や連絡先の記録依頼も継続して実施することが望ましいといえるでしょう。
換気対策としては、夏や冬などのエアコンを使用する時期であっても必ず実施します。十分な窓の開閉が難しい環境では空気清浄機の導入が推奨されます。
3密を含む感染リスクのある行動(大人数での面会、飲食、大声での会話等)を避けたうえで面会を実施できるよう、個室での面会ではなく窓に近いオープンな場所にて面会を実施する工夫がなされています。
感染対策の観点から、対面面会では面会者への検温や体調確認、面会場所への誘導、見守り、面会前後の消毒・換気対策等の実施が求められます。面会再開により職員の負担の増加が懸念されるため、職員配置の工夫や多職種との連携等の体制を整える取り組みが実施されています。
感染拡大に伴い面会を制限せざるを得ない状況になって以降、施設側と家族のコミュニケーションが課題となっている事業所は多いでしょう。面会再開にあたりご家族への施設来訪を促すとともに、入所者の体調不良の報告等だけではなく「良かった変化」「施設での出来事」等を伝え、家族との距離を遠ざけない工夫がなされています。
*参考:厚労省「with コロナで行う高齢者施設での面会について(高齢者施設職員向け:動画・リーフレット)」
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。