新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に、介護サービス事業者が関わる場合の特例について、通知が発出されています。通所系サービス事業所で高齢者のワクチン接種を実施する場合や、利用者が接種会場への移動手段として訪問介護を利用する場合、特養など施設の医師がワクチン接種に協力する場合の人員基準など、現時点の特例の内容を確認しておきましょう。
通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、介護予防認知症対応型通所介護
①接種前後の誘導や支援、見守り等の業務は介護保険サービスとして提供されているものとし、予め居宅サービス計画に位置付けられた提供時間内で介護報酬を算定することが可能。
②事業所内でワクチン接種を実施するにあたり、必要経費について、新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業費国庫補助金を財源とする委託費が支払われている場合は、従来の取扱いのとおり、保険外サービスとして提供されているものとする。
サービス提供時間の算定に当たっては、通所系サービスの提供時間には保険外サービスの提供時間を含めず、かつその前後に提供した通所系サービスの提供時間を合算し、1回の通所系サービスの提供として取り扱う。
この場合、保険外サービス通知に則った対応が必要となるが、特例的に、ケアマネジャーが居宅サービス計画において当該保険外サービスに関する情報を記載することは不要とする。
上記①・②いずれの場合も、送迎は介護保険サービスとして提供されているものとし、介護報酬を算定できる。(送迎を行った場合は送迎減算を適用しない)
上記①の場合、予防接種に伴う業務は、所要の提供時間に対応する介護報酬を算定できる(ケアマネジャーが、事前に利用者に説明し同意を得て、予め居宅サービス計画に予防接種を位置付けている必要あり)。送迎についても算定できる。
サービス提供時間が2時間未満であっても、「2時間以上3時間未満」サービス提供を行ったものとして取り扱う(通所リハの場合、1時間未満でも「1時間以上2時間未満」に該当)。
上記②の場合、予防接種に伴う業務と送迎は、保険外サービスとして提供されているものとなる。特例的にケアマネジャーが居宅サービス計画において当該保険外サービスに関する情報を記載することは不要。
従来の取扱いのとおり、保険外サービスとして提供されているものとなる。特例的にケアマネジャーが居宅サービス計画において当該保険外サービスに関する情報を記載することは不要。
一部の職員が当該送迎の業務に従事する際の、事業所内の人員配置基準については、柔軟な対応が可能。
また、当該送迎について利用者から対価を得ていない場合は、道路運送法に基づく許可・登録が不要となる。(市町村から送迎の委託を受け、新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業費国庫補助金を財源とする委託費を受領している場合でも、許可・登録は不要)
以下の場合は、利用者の居宅と事業所間の送迎を行っていることから、費用について介護報酬を算定できる。
・利用者の居宅から、接種会場を経由して、通所系サービス事業所への送迎を行う場合
・通所系サービス事業所から、接種会場を経由して、利用者の居宅への送迎を行う場合
送迎に時間を要して、一時的に事業所内の人員配置基準を満たせない時間帯が生じることも考えられるが、柔軟な対応が可能。
また、ワクチン接種会場に立ち寄らない送迎の場合に通常選択される一般的な経路を逸脱する場合であっても、道路運送法に基づく許可・登録は不要となる。
訪問介護の通院等乗降介助が適用となる。また、以下の場合に限り、身体介護(運転時間を控除した所要時間に応じた介護報酬)を算定できる。
・接種会場に外出するために乗車・降車の介助を行うことの前後に、連続して相当の所要時間(20分から30分程度以上)を要し、かつ、手間のかかる外出に直接関連する身体介護(移動・移乗介助、身体整容・更衣介助、排泄介助等)を行う場合(要介護4または5の居宅要介護者の場合)
・接種会場への外出に直接関連しない身体介護(入浴介助・食事介助等)に30分から1時間程度以上を要し、かつ、当該身体介護が中心である場合(要介護1から5までの居宅要介護者の場合)
訪問介護の身体介護のうち、通院・外出介助が適用となる。訪問介護員等が、居宅要介護者に付き添い、バスやタクシー等の公共交通機関を利用して、移送中の気分の確認も含めたワクチン接種が行われる会場への外出介助を行った場合に、身体介護(所要時間に応じた介護報酬)を算定できる。
通院・外出介助を利用する場合には、居宅サービス計画に係るサービス内容の記載の見直しが必要となるが、サービス提供後に行うことが可能。また、同意について最終的には文書による必要があるが、サービス提供前に説明を行い、同意を得ていれば、文書はサービス提供後に得ることで問題ない。
(介護予防)小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護の訪問サービスには、訪問介護でいう身体介護の通院・外出介助が含まれているため、居宅要介護(支援)者に対して接種会場への外出介助を行うことができる。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、併せて訪問介護の通院等乗降介助を利用することができる。そのため、訪問介護員等は自ら運転する車両を活用して、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用する居宅要介護者に対して接種会場への移送に係る介助を行うことができる。
2021年4月5日通知:Vol.963 新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第20報)
介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院
自施設の入所者へのサービス提供に差し支えない範囲で、自治体の依頼を受け、新型コロナワクチンの接種に協力する場合は、人員基準上の配置等に影響しない取扱いとなる。
ただし、自施設の利用者の心身の状態の把握や管理業務等に支障がないよう、当該時間中の連絡体制等を整えておくこと。
2021年5月6日通知:Vol.976 新型コロナウイルス感染症に係る介護サ ービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第21報)
高齢者施設において、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の間違いが発生していることから、厚労省は本人確認を徹底するよう通知しています。
【発生事例】高齢者施設におけるワクチン接種会場に、接種対象者と非接種対象者が混在していたこと等により、対象ではない(既に接種済で18 日以上の間隔があいていない)者に接種したという事例が発生。
これに対して厚労省は、視認のみで確認するのではなく、下記の対応例を参考に、接種対象を確実に確認することを求めています。
・接種券及び予診票を用いて接種対象者であることや新型コロナ予防接種歴を確認する。
・接種対象者と非接種対象者が混在しないように、接種を行う区域を明確にするとともに、接種時に予診票や接種予定者リスト等で確認する。
・予診票を接種対象者の手元におき接種終了時に回収する。
介護サービスに従事する保健師、看護師、准看護師が、自治体の依頼を受けて新型コロナウイルスワクチンの接種に協力する場合、人員基準上の配置等に影響しない取扱いとなる。
ただし、自事業所・施設の利用者等の心身の状態の把握等の健康管理や看護の提供に支障がないよう、当該時間中の連絡体制等を整えておくこと。
また、看護職員について人員配置基準以上の人員配置をした場合等に算定可能となる加算(看護体制加算、看護体制強化加算、看護職員配置加算等)についても、同様に体制等を整えることを前提とし、自治体の依頼を受け、新型コロナワクチンの接種に協力する場合は、当該加算の配置に係る要件に影響しない取扱いとなる。
介護経営ドットコムの記事を制作・配信している編集部です。日々、介護事業所を経営する皆さんに役立つ情報を収集し、発信しています。