介護施設内コロナ感染者への特例対応まとめ 施設療養者へ最大15万円補助・診療報酬で手当も

2021.06.03
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新型コロナウイルスの感染状況に未だ収束の見通しが立たない中、厚生労働省はこれまで、施設入所者から感染者・感染疑い事例が出た場合の対応について、人員基準の緩和措置等の臨時的対応を講じてきました。5月21日には、施設内療養に関する支援等として、施設療養の感染者1人につき最大15万円の追加支援を実施することを明らかにしています。最新の取組みも踏まえ、介護施設におけるこれまでの特例対応について整理していきましょう。

新型コロナウイルス感染症への特例対応の経緯

厚労省はこれまで、新型コロナウイルス感染症に関する様々な特例措置を実施してきました。3度目の政府による緊急事態宣言が一部自治体に発令された2021年4月以降も、自治体に対して高齢者施設などで働く従業員に検査を集中的に実施するよう求めるといった取組みを実施しています。

これまでに発出された人員基準の緩和措置、介護報酬改定上の対応内容は以下の通りです。

人員基準の緩和措置

感染流行時に自治体の要請等に基づき、新型コロナウイルス感染症患者受け入れ医療機関から退院患者を受け入れた場合は、下記を参考とした人員基準等の柔軟な取扱いが可能です。

・定員超過減算を適用しない。

・指定等基準、基本サービス費及び加算に係る施設基準について、当面の間、受け入れた入所(居)者を除いて算出できる。

介護報酬改定上の対応

●基本報酬0.1%上乗せ算定

2021年度介護報酬改定にて、新型コロナウイルス感染症への対応を評価する特例的な介護報酬として、同年4月から9月30日までの月の基本報酬に0.1%上乗せして算定することが求められます。

関連記事:新型コロナ対応の基本報酬0.1%上乗せはどう算定するか 2021年4~9月までの介護報酬特例

● 退院基準を満たした患者を受け入れた場合の加算算定

医療機関から、新型コロナウイルス感染症の退院基準を満たした患者を受け入れた場合、入所した日から起算して30日を限度として「退所前連携加算」を算定することが可能です。

(対象サービス:介護保険施設、地域密着型介護老人福祉施設、介護療養型医療施設、介護医療院)

なお、介護老人保健施設の4月以降の取り扱いは、入所した日から起算して15日間は入退所前連携加算(Ⅰ)(600 単位)を算定し、16日から30日までは入退所前連携加算(Ⅱ)(400 単位)を算定することとなっています。

新型コロナ感染・継続入所者への診療報酬上の対応実施を決定

4月30日には、新型コロナに関連した介護施設への対応として、診療報酬上でも手当てを行うことを厚労省が明示しました。具体的には、介護施設(※)に入所する者が新型コロナウイルス感染症に感染した場合であって、病床ひっ迫時にやむを得ず当該施設内にて療養を行う場合、「緊急往診加算」「院内トリアージ実施料」「在宅酸素療法指導管理料2」が算定可能となります。

※対象サービス:介護医療院、介護老人保健施設、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人福祉施設

コロナ感染入所者への往診:緊急往診加算が算定可能に

患者または看護者からの新型コロナウイルス感染症に関連した訴えにより、医師が速やかに往診しなければならないと判断し、介護老人福祉施設の配置医師または介護医療院等の併設保険医療機関の医師がこれを行った場合、以下の取り扱いが明示されました。

・初・再診料、往診料は算定できない

・「緊急往診加算」(病床を有する場合は850点)は算定できる

コロナ感染入所者への往診:院内トリアージ実施料が算定可能

必要な感染予防策を講じた上で、介護老人福祉施設の配置医師または介護医療院等の併設保険医療機関の医師が往診等を実施する場合に、「院内トリアージ実施料(1回300点)」を算定可能です。

なお、必要な感染予防策については、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」に従い、院内感染防止等に留意した対応を行うことが求められます。

関連資料:「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き(第5版)」厚労省

コロナ感染入所者への酸素指導:在宅酸素療法指導管理料(2)を算定可能

介護老人福祉施設の配置医師または介護医療院等の併設保険医療機関、もしくは併設保険医療機関以外の保険医療機関の医師が酸素療法に関する指導管理を行った場合、「在宅酸素療法指導管理料2」の「2 その他の場合(2,400点)」を算定可能です。

ただし、複数の保険医療機関が患者に対して診療を行っている場合であっても、当該患者に対して主として診療を行っている保険医が属する1つの保険医療機関においてのみ、算定が可能となります。なお、在宅療養指導管理材料加算については、要件を満たせば従来通り算定できます。

関連資料:新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その43)

地域医療介護総合確保基金による更なる支援

さらに、5月21日、病床のひっ迫によって感染した利用者が入院できず、介護施設内にて療養を続けざるを得ないケースが増加していることを受け、厚労省は感染入所者1人あたり最大15万円を追加で支給することを事務連絡で示しました。

助成対象

介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設、認知症対応型共同生活介護事業所、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、短期入所生活介護事業所及び短期入所療養介護事業所

助成の内容及び要件

通常のサービス提供では想定されない感染対策の徹底等を行うとともに、療養の質及び体制の確保を支援する観点から、追加で必要となる項目(※)に対して、療養者毎に要するかかり増し費用として追加支給されます。

※追加で求められる項目
(1)必要な感染予防策を講じた上でのサービス提供
(2)ゾーニング(区域をわける)の実施
(3)コホーティング(隔離)の実施、担当職員を分ける等の勤務調整
(4)状態の急変に備えた・日常的な入所者の健康観察
(5)症状に変化があった場合等の保健所等への連絡・報告フローの確認

助成の要件は下記の2点に該当する場合となります。

・保健所に入所者の入院を依頼したが、病床ひっ迫等により、保健所等から入所継続の指示があった場合など、やむを得ず施設内療養することとなった高齢者施設等であること。

・保健所の指示等に基づき、必要な体制を確保しつつ、施設内療養時の対応の手引きを参考に、(1)~(5)を実施した高齢者施設等であること。

助成の上限額

施設内療養者1名につき、15万円

(15日以内に入院先が見つかった場合は、療養期間に応じて1日あたり1万円を支給)

適用期間

2021年4月1日~(遡って算定可能)

Vol.981 高齢者施設等における感染防止対策及び施設内療養を含む感染者発生時の支援策

別添(7)資料

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