3月17日に社保審・介護保険部会による「第8回介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」が開かれ、介護現場の文書負担の軽減に向けた議論が行われました。本記事では、文書量半減に向けたこれまでの取り組みとともに、今後のスケジュールについて整理していきます。
介護業界の人手不足が深刻化する中、専門人材が本来の業務に集中し、ケアの質を確保するために、介護現場の業務効率化が大きな課題となっています。自治体においても同様に、限られた人員の中で指定権者や保険者としての役割を適切に果たすため、業務効率化が急務です。その一つとして、文書に係る負担軽減が進められています。
厚労省は「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」にて、「簡素化・標準化・ICTの活用」の3つの視点で検討し、以下のような文書負担軽減の取組を実施しています。
・押印及び原本証明の見直しによる簡素化
・提出方法(持参・郵送等)の見直しによる簡素化
・人員配置に関する添付資料の簡素化
・施設・設備・備品等の写真の簡素化
・介護職員処遇改善加算/特定処遇改善加算の申請様式の簡素化
・介護医療院への移行にかかる文書の簡素化
・実地指導に際し提出する文書の簡素化及びICT等の活用
・指定申請関連文書の標準化
・実地指導の「標準化・効率化指針」を踏まえた標準化
・申請様式のホームページにおけるダウンロード
2020年代初頭までに、行政が求める帳票等の文書量を半減することが、介護分野における文書負担軽減の取組みの目標として据え置かれています。
取り組み内容によって実施率にばらつきはあるものの、「処遇改善加算/特定処遇改善加算の申請様式の簡素化」や「実地指導にて提出する文書の簡素化およびICT等の活用」では93.6%の都道府県が実施。全取り組みの平均値においても、都道府県の実施率は77.0%と、比較的高い結果が示されました。
その一方で、全市町村の実施率平均は57.5%と、地域ごとに取り組み状況にばらつきがあります。杏林大学客員教授の清原慶子委員は「都道府県、政令都市、市町村の結果を見ると、一定の地域差があるように思える。今後は適切に導入できている事例の共有によって、導入するための障害を取り除き、導入の促進が図られるキメ細かい支援体制が必要」と提言しています。
2020年12月25日には、「押印を求める手続きの見直し等のための厚生労働省関係省令の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第208号)」が公布・施行され、省令において押印を求めている行政手続きについて押印を求めないことや、行政手続きの規定および様式について押印を不要とする改正が行われました。
「押印」に関する簡素化については、上図の2020年10月時点から、更に取り組みが進んでいくことが期待されます。
2021年度は、取り組みが進んでいる自治体に対する好事例のヒアリング等の検討・周知を通じて、更なる文書負担軽減を促進する見込みです。
また、2021年度中に行政が求める文書のウェブ入力・電子申請を可能にするシステム改修を行い、2022年度には運用を開始する予定です。2021年度は、加算の添付書類等の簡素化・標準化なども進められます。
事業者が独自に作成する文書においては、2021年度もICT導入支援事業を引き続き全都道府県で拡大し、文書負担の軽減を図ります。
引用:第8回社保審・介護保険部会「介護分野の文書に係る負担軽減について」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。