居宅介護支援の基本報酬引き上げに意見多数 医療連携に現場の課題も 介護給付費分科会

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厚生労働省は8月19日に社会保障審議会 介護給付費分科会をオンラインで開催。2021年度の介護報酬改定に向けた議論の中で、居宅介護支援について議論しました。ケアマネジメントへの期待が高まる一方、居宅介護支援の経営が厳しい現状を受けて、基本報酬の引き上げなどを求める意見があがっています。

居宅介護支援の経営状況

居宅介護支援事業所の利用者は年々増加し、地域で果たすべき役割への期待も高まる中、2018年度の介護報酬改定では、下記のポイントに沿って、基本報酬の引き上げや加算の創設・引き上げといった改定が行われました。

・医療と介護の連携の強化

・末期の悪性腫瘍の利用者に対するケアマネジメント

・質の高いケアマネジメントの推進

・公正中立なケアマネジメントの確保

・訪問回数の多い利用者への対応

・障害福祉制度の相談支援専門員との密接な連携

その結果、2015年度の決算ではマイナス1.8%だった収支差率が、2018年度の決算ではマイナス0.1%になりました。経営状況は良化傾向にありますが、他のサービス種別と比べると、全サービスの中で唯一、収支差率がマイナスとなっています。

これに対して委員からは、2018年度に続き、2021年度の報酬改定でも基本報酬の引き上げを検討すべきという意見が集まりました。また、ケアマネジャーの養成数が少なくなっている現状から、ケアマネジャーの処遇改善が必要という意見もありました。

「医療と介護の連携の強化」について現場の意見

同会議で行われた事業者団体ヒアリングでは、四病院団体協議会から、居宅介護支援と医療の連携について課題が共有され、検討を求める意見があがりました。

●退院・退所加算

2018年度改定では、医療機関等との連携回数や、カンファレンスの参加などを評価する見直しがありました。算定するためには、医療機関等の職員と面談し、利用者の情報を得た上でケアプランを作成する必要があります。

(退院・退所加算の単位数改定)

四病院団体協議会からは、退院決定~退院日までの期間が短くなっている現状から、ケアマネジャーの退院支援が難しくなっているという指摘がありました。退院が決まってから退院まで、1~2日というケースも多い中で、退院時カンファレンスへの参加、アセスメントや担当者会議の実施、ケアプランの作成、介護サービス事業所の調整、福祉用具の選定・搬入などを行うことは現実的ではなく、それを踏まえた議論が必要ではと提案しています。

●入院時情報連携加算

利用者の入院時、医療機関との迅速な情報連携を促進するために、2018年度改定では、入院後3日以内の情報提供を新たに評価することになりました。

連携に必要な情報については、厚労省から参考様式が示されているものの、調査によると、医療現場・介護現場からは「不足している情報がある」という意見が集まっています。四病院団体協議会は、医療側、介護側で必要な情報を明確にして、相互に周知していくことを求めました。

●ターミナルマネジメント加算

末期の悪性腫瘍の利用者に対する「ケアマネジメントプロセスの簡素化」が活用されていないという指摘もありました。在宅での看取りができる体制をつくるために、ケアマネジャーの法定研修等で周知すること、また、主治医の助言が不可欠であることから、医師への周知も必要、という意見がありました。

これらの医療との連携だけでなく、インフォーマルサービスも含めたケアプランの作成など、ケアマネジメントの質を向上する観点や、ケアマネジャーが活躍できる環境整備の観点など、厚労省は複数の論点をもとに、具体策を議論していきます。報酬増の方向となるのか、今後の議論をチェックしておきましょう。

※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年8月25日掲載のものです。

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