第191回社保審・介護給付費分科会が11月5日に開催され、地方分権提案のひとつである訪問看護ステーションの人員基準緩和を求める意見に対し、日本看護協会の岡島さおり氏をはじめ多くの委員が反対意見を述べました。
厚労省が2020年に募集した地方分権改革提案において、訪問看護ステーションごとに置くべき看護師等の員数(看護師の配置が常勤換算で2.5人以上)を「従うべき基準」から「参酌すべき基準」とする見直し要請案があり、本分科会で議題にあげました。
この要請案については9月4日に実施された第184回分科会でも、「地域密着サービスの適切な提供や質の確保で心配があり、慎重に検討すべき」との意見をはじめとした反対意見が寄せられています。
訪問看護では利用者への安定的なサービス提供を維持する観点から、大規模化・多機能化の視点が不可欠とされています。日本看護協会の岡島さおり氏は、小規模な事業所の設置を容認するリスクとして、訪問看護の実態を下記のように述べました。
・小規模では1事業所あたりの訪問件数が少ないために、経営が厳しい状況にある
・看護職員4.3人以上でようやく収支差がプラスになるとの調査結果もある
・緊急訪問やオンコール、事務作業など、看護職員一人にかかる負担が大きく離職につながっている
・管理者がオーバーワークによって健康を害している実態もある
これらを踏まえ、「仮に中山間地域で現行基準の2.5人より少ない人員での(新たな訪問看護ステーションの)開設を認めたとしても、安定的なサービスを継続することは困難だ」と提言。
さらに、中山間地域と都心部それぞれにおける小規模事業所の問題点を挙げ、「需要に合わせた人員基準の見直しでは解決できない様々な課題がある。2.5人の基準を下げるということは、人口規模に関わらず労働負荷の高い不安定な運営に拍車がかかるとともに、利用者に不利益が及ぶ恐れがある」と苦言を呈しました。
人員基準の緩和によらない解決方法として、中山間地域ではサテライトの設置や特例居宅介護サービス費などのすでにある仕組みを活用する、地域の医療機関が一定地域をカバーする(夜間帯を担当する)といった代替案も示されました。
引用:第191回社保審・介護給付費分科会「地域包括ケアシステムの推進(検討の方向性)」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年11月10日掲載のものです。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。