10月22日に開かれた第189回社保審・介護給付費分科会にて、訪問入浴介護サービスにおける清拭・部分浴サービス提供時の減算率の見直しや、初期加算の新設について、前向きな検討がなされました。
現行の報酬体系では、訪問時の利用者の状態から全身入浴が困難な場合や、利用者の希望により、清拭または部分浴のサービス提供となった場合に、報酬が減算されます。これは、全身入浴と比べてサービス提供時間が短縮されることを考慮したものとされていますが、本分科会資料にて、両者のサービス提供時間には目立った差がないことが示されました。全身入浴で平均60分、清拭または部分浴で平均53分となっています。
訪問入浴は重度者の利用が多く、当日の状態次第で全身入浴が困難となる場合もありますが、人員を当日に調整することは難しく、3人1組の人件費は発生します。訪問入浴介護事業所の45.5%が赤字である現状も提示されました。
厚労省は経営の安定化を図る観点から、清拭または部分浴のサービス提供になった場合の減算幅を見直す検討案を提示。委員の多くがこの方針に賛同しています。
訪問入浴では、利用者の状態に関する情報収集や室内の浴槽設置環境の確認など、利用開始前に一定の訪問業務が実施されています。しかし現行では、この取り組みを評価する加算がありません。一方、主な訪問系・多機能系サービスでは、上記に類似する初回業務について、初回・初期加算として評価されています。
これらの現状を踏まえ、訪問入浴介護においても、新規利用者へのサービス提供時の対応を評価する方向で検討案が示されました。賛成意見が多く集まり、清拭・部分浴時の減算幅の見直し案とともに、初回・初期加算の新設についても前向きに議論が進みそうです。
引用:第189回社保審・介護給付費分科会「訪問介護・訪問入浴介護の報酬・基準について(検討の方向性)」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年10月26日掲載のものです。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。