社会保障審議会・介護給付費分科会では、2024年度介護報酬改定に向けて個別サービスに関する検討が進んでいるところです。これまでに地域密着型サービス、在宅系サービス、施設・入居系サービスについて話し合いが一巡しました。
こちらのページでは訪問看護を巡る検討状況や、直近のトレンド、主要なテーマに関連するデータについて振り返ります。
訪問看護の介護報酬について検討が行われたのは、7月の第220回社保審・介護給付費分科会です。厚生労働省がこの日示した「論点」は以下の通りです。
医療ニーズの高い在宅療養者が増加している中、退院直後からの支援、緊急時対応、ターミナルケア等について、より質の高い訪問看護サービスを効果的・効率的に提供するためにはどのような方策が考えられるか。
このほかにも直近のトレンドを示すデータが公開されています。
訪問看護を巡る基礎データとしては以下のようなものが示されました。
(【画像】第220回社会保障審議会介護給付費分科会資料3より(以下同様)
ここでは、
などが読み取れます。
今回の論点となった”医療ニーズ”(退院直後からの支援、緊急時対応、ターミナルケアなど)に着目し、関連加算のデータそれに対する意見を見てみましょう。
厚労省は訪問看護で年々増加している医療的な処置の内容を示し、「創傷管理や排泄ケア、緊急時の対応等の必要性が高まっている」との所見を示しています。
これに対しては、複数の委員が専門的な技術を持った看護師の配置を評価することなどを求めました。
退院時からの在宅サービスの介入、連携促進は近年の制度改正で注力されている項目の一つであり、訪問看護においても21年度の改定で退院当日の訪問看護費の算定が認められていました。
このトピックに関連する加算として今回算定状況が示されているのは、退院時共同指導加算についてです。これまでは算定率が増え続けていましたが直近の20年と21年でコロナ禍の影響を受けて落ち込んでいます。
医療ニーズへの対応状況を評価する加算としては、まず、「特別管理加算」があります。同加算の算定事業所数は、(Ⅰ)(Ⅱ)ともに年々増加しており、算定割合は22年4月時点で7割に達しています。なお、要介護度別で見ると要介護5では微減傾向にあります。
医療保険の特定管理加算の話題になりますが、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、特掲診療料の施設基準等別表第七号(別表7)について、「ずいぶん古くに作成されたもの」と指摘、同じく”別表8”についても「現状の在宅医療の実態となじまない項目もある」として、見直しを検討するべきとしました。
医療ニーズの高い患者へのサービス提供体制を評価する加算として、「緊急時訪問看護加算」のデータも示されました。算定事業所の割合は年々高まり、22年度で9割弱となっています。
日本看護協会の田母神裕美委員は、訪問看護事業所の24時間体制を確保する重要性は認めつつ、「複数の事業所の連携等によって、地域で24時間体制を確保し職員の負担軽減を図るということも必要」と述べています。
看取り期におけるケアの提供・体制を評価するターミナルケア加算の算定状況では、実数では増加していますが算定割合は10%程度で推移しています。また、利用者の死亡前14日間における訪問看護で提供されたケアの内容は、介護保険・医療保険ともそれほど大きな違いは見られませんでした。
田母神委員はこのターミナルケアをはじめとして、サービス実態が近いにもかかわらず医療保険と介護保険との間で評価に差があるものについて是正を図ることを、24年度改定に向けて検討するよう求めています。
こちらは理学療法士や作業療法士、言語聴覚士による訪問看護の算定単位数の状況についてです。全体として増加傾向にありますが、重度対応の促進(=「訪問看護の機能強化」)が図られた21年度報酬改定以降、介護予防訪問看護では減少しています。
特に単位数の減算幅が50%に拡大した1日2回以下の訪問では、その影響が顕著に見られます。
訪問看護ステーションからの理学療法士らによる訪問は、21年度改定を巡る検討では立場によって意見が大きく分かれたテーマでもあります。
今回の検討に当たって、看護職員の割合が高い訪問看護ステーションでは緊急時訪問看護加算やターミナルケア加算の算定率が高い影響にあり、中重度者や看取りへの対応していることが伺えることなども改めて示されています。
関連する意見としては、経団連の井上隆委員が「前回改定以降も(理学療法士らによる訪問の)増加傾向はあまり変わっていない」と指摘。例えば要介護度別に看護職員とリハビリテーション専門職の訪問の状況を分析するなど、より詳細のデータを見たうえで、医療ニーズや要介護度が高い利用者へのサービスに重点化を図る必要性があるとしています。
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