このコラム(連載)は、高齢者社会ラボによる『介護の質の評価に関する調査』(アセスメント編、ケアプラン~モニタリング編・以下「本調査」)の結果から、私が「気になるポイント」を示しながら、介護支援専門員(以下「ケアマネジャー」)のみなさんの実務に役立つ論考を行うものです。当初から、実践現場のケアマネジャーには少し「耳の痛い」話もお示ししています
*第1回:ケアマネジャーの「孤立」、第2回:「医療・介護連携」に悩むケアマネジャー
今回(第3回目)と次回は、ケアマネジャーの中核的な業務と言ってもよい「アセスメント」について、その「情報収集」の課題について触れてみます。
日頃から私は、“ケアマネジメントにおける「アセスメント」は、①「情報収集」と②「分析」から成り立つ”と説明しています。この構造を図1に示します。
(【図1】)
簡潔に説明を加えれば、利用者の生活の全体像について、多様な手段を用いてさまざまな角度から「情報収集」を行い、それをもとに、生活上の問題に関して「分析」を行って、ケアプランに示す課題(ニーズ)などを明らかにすることと言えます。
つまり、本稿で焦点をあてる「情報収集」は、アセスメントの入口にあたる重要な過程と言えるわけです(「分析」については次回以降に触れます)。
兼ねてから「ケアマネジャーはアセスメントが不十分」だと指摘され、ケアマネジャー自身も「アセスメントが苦手」と語ることが多くあります。ケアマネジャーがそれを克服しようとする際には、「情報収集」と「分析」、そして「ケアプラン(原案)作成」にアセスメントの過程を分割してスキルアップの方策や対応策などを検討する必要があるでしょう。
先述の調査で私が気になったポイントのひとつに、「アセスメント時の情報収集」に関する結果があります。この調査では、ケアマネジャーにアセスメントの各項目についてどの程度情報収集をしたのか尋ねているのですが、その各選択肢について「十分に収集している」と回答した比率が50%を下回っているものが少なくなかった点がとても心配に感じました(図2)。
社会福祉士、介護支援専門員。1986年から社会福祉・医療分野での相談援助の実践に従事。医療ソーシャルワーカーや居宅介護支援事業所での介護支援専門員の実務経験を経て、 2005年から東洋大学で福祉専門職養成教育と介護保険制度・ケアマネジメント等の研究に従事。現在、東洋大学福祉社会デザイン学部教授。