2024年度の介護報酬改定に向けて、社会保障審議会・介護給付費分科会における今後の検討スケジュールの大枠が5月24日に示されました。今後の論点ともに確認しておきましょう。
2024年度介護報酬改定に向けたスケジュール
厚生労働省が示した同分科会での検討スケジュールです。過去の改定と同様の流れで2023年内に介護報酬や運営基準に関する「基本的な考え」が取りまとめられる予定です。
24年度の介護報酬改定は、事実上この取りまとめに沿って行われます。
- 2023年6月~夏ごろ
- 主な論点について議論
- 2023年9月ごろ
- 事業者団体等からのヒアリング
- 2023年10~12月ごろ
- 具体的な方向性について議論
- 2023年12月中
- 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・取りまとめ
- 2024年1月ごろ
- 介護報酬改定案 諮問・答申
社保審・介護給付費分科会での今後の検討テーマ
制度改正の大枠や主な法改正に必要な事項を話し合う社保審・介護保険部会では、「24年度介護報酬改定で対応すべき事項」などとして主に以下の項目を挙げています(太字部分は編集部)。
先に示したスケジュールに沿って、今後はこれらの内容について結論が出される見込みです。
- 特に都市部における居宅要介護者の様々な介護ニーズに柔軟に対応できるよう、複数の在宅サービス(訪問や通所系サービスなど)を組み合わせて提供する複合型サービスの類型などを設けることも検討することが適当。
- 高齢者リハビリテーションについては、どの地域でも適時適切に提供されるよう、地域支援事業と保険給付の双方の観点からのリハビリテーション提供体制の構築を更に促進していくことが必要。
- 特別養護老人ホームにおける医療ニーズへの適切な対応の在り方について、配置医師の実態等も踏まえつつ、引き続き、診療報酬や介護報酬上の取扱いも含めて、検討を進めることが適当。
- 介護老人保健施設の在宅復帰・在宅療養支援の機能、介護医療院の医療が必要な要介護者の長期療養・生活施設としての機能をそれぞれ更に推進していく観点から、必要な医療が引き続き提供されるよう取組を進めることが必要。
- LIFEについては、エビデンスを蓄積する観点から、データを提出する事業所・施設を増やし、収集するデータを充実させる必要があるが、このためには、事業所・施設側の入力負担の軽減を図るとともに、収集する項目がエビデンスの創出及びフィードバックに資するものとなるよう、介護現場や研究者の声も踏まえ項目の精査を検討することが適当。
- 介護現場の安全性の確保の取組が全国で広がるよう、自治体の取組を後押しするための好事例の横展開や、国における事故情報収集・分析・活用の仕組みの構築など、具体的な方策について、医療や教育・保育施設などの他分野の取組も踏まえつつ、引き続き、早期に検討を進めることが適当。
- 適切な手続を経ていない身体的虐待に当たる身体拘束が依然として発生している状況を踏まえ、在宅サービスにおける身体拘束の適正化を図るための介護報酬上の取扱いや身体拘束を要しない介護技術の普及を含め、正当な理由がない身体拘束の防止のための方策を講じることが適当。
- 介護保険制度における福祉用具については、「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」の議論の整理を踏まえ、福祉用具貸与・販売種目の在り方や福祉用具の安全な利用の促進等について、引き続き検討を行うことが適当。
- 介護現場におけるテクノロジーの導入は早急に推進する必要。現在実施している実証事業などで得られたエビデンス等を踏まえ、テクノロジーを活用した先進的な取組を行う介護付き有料老人ホーム等の人員配置基準を柔軟に取り扱うことの可否を含め、検討。
- 介護職員の業務負担軽減、介護サービスの質の確保の観点から、介護助手に切り分け可能な業務や切り分けたときに効果が高いと見込まれる業務の体系化、業務遂行上の留意点の整理、同じ職場で働く構成員としての介護助手の制度上の位置付けや評価・教育の在り方、専門職との連携も含め、サービス特性を踏まえた導入促進のための方策を引き続き検討することが適当。
- 介護人材不足への対応や、安定的なサービス提供を可能とする観点からは、介護の経営の大規模化・協働化により、サービスの品質を担保しつつ、人材や資源を有効に活用することが重要。
- 「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」では、デジタルの力を活用しながら、生産年齢人口が減少する中での人手不足の解消や生産性向上等の観点から、介護サービス事業所における管理者の常駐等について見直しの検討が提言されているが、これらも踏まえ、各サービスにおける管理者等の常駐等について、必要な検討を進めることが必要。
- 介護老人保健施設及び介護医療院の多床室の室料負担の導入については、在宅でサービスを受ける者との負担の公平性、各施設の機能や利用実態等、これまでの本部会における意見を踏まえつつ、介護給付費分科会において介護報酬の設定等も含めた検討を行い、次期計画に向けて、結論を得る必要。
また、厚労省は、今後の議論における「分野横断的なテーマ」として、以下のテーマを示しました。
- 地域包括ケアシステムの深化・推進
- 自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進
- 介護人材の確保と介護現場の生産性の向上
- 制度の安定性・持続可能性の確保