厚生労働省は3月10日に「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」の資料を公開し、第8期介護保険事業(支援)計画の基本指針について考え方を提示しました。
基本指針は、3年ごとに定める都道府県介護保険事業支援計画と市町村介護保険事業計画を立てるためのガイドライン。第8期は、2021~2023年度の計画にあたります。
第8期の基本指針のポイントは、以下の6項目です。昨年末に介護保険部会で取りまとめた「介護保健制度の見直しに関する意見」を踏まえた内容を、介護保険事業(支援)計画に盛り込みます。
●2025・2040年を見据えたサービス基盤・人的基盤の整備
●地域共生社会の実現
●介護予防・健康づくり施策の充実・推進
●有老とサ高住に係る都道府県・市町村間の情報連携の強化
●認知症施策推進大綱等を踏まえた認知症施策の推進
●地域包括ケアシステムを支える介護人材確保と業務効率化の取り組みの強化
第8期計画では、計画期間より先の2025年、さらには2040年を見据えて、地域ごとの推計人口に基づくサービス基盤の整備を進める方針です。
地域ごとのサービス需要は、大きな傾向として下記の3つに分けられます。
●傾向1:2040年に向けて利用者数(需要)が増え続けると予想される地域。主に都市部で、中には2018年時点の利用者数から2倍超と予想される保険者もある。
●傾向2:2040年までの間に利用者数(需要)がピークとなり、徐々に減少していくと予想される地域。②はサービス需要の見込で、②’のように早い段階で需要が減少していく可能性も予想される。
●傾向3:すでにサービス需要が成熟化し、利用者数(需要)が減り続ける地域。
いずれも、施設サービス、居宅サービス、地域密着型サービスをバランスよく組み合わせて整備する方針です。特に、傾向2・3のように需要が減少していく地域においては、利用者の状況の変化に合わせた、過不足ないサービス基盤を整備しなくてはいけません。保険者が連携し、広域型施設である施設サービスなど、広域的な整備を進めていく必要があると示しています。
また、都市部では有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの整備が進んでいる状況が共有されています。2月21日の介護保険部会では、全国老人保健施設協会会長の東委員から、特養の待機者数データの正確性に懸念があるという指摘がありました。東京都社会福祉協議会の調査で、特養の待機者のうち約30%が待機状態でない実態がわかり、有料老人ホームなどの整備が進む中で、入居申込者=待機者ではない状況が生まれているといいます。
第8期計画に向けては、地域の需要に対応した介護サービス基盤の整備のために、利用者・待機者を正確に把握することが求められています。
サービス基盤整備の支援策として、「地域医療介護総合確保基金(介護施設等の整備分)」のメニューも追加・拡充する方針です。
【新規】
●特養など広域型施設の大規模修繕・耐震化についての補助
●介護人材確保のために、職員用の宿舎を整備する費用の一部を補助
●介護施設等の看取り環境の整備のため、個室の確保を目的とする改修費を補助
●共生型サービスの整備推進のため、介護事業所が障害児・者を受け入れるための改修・設備を補助
【拡充】
●都市部の多様なニーズの受け皿として、介護付きホームの整備を促進するために、特定施設入居者生活介護の指定を受ける介護付きホームを補助対象に追加
●介護施設等の大規模修繕に合わせて行う、ロボットやセンサー、ICTの導入を補助対象に追加
●多床室のプライバシー保護のための改修について、特養併設のショートステイ用居室を補助対象に追加
●通いの場等、介護予防拠点において、地域住民の健康づくりと防災の意識啓発のための取組を補助対象に追加
厚生労働省は、6・7月頃に基本指針の本文案をまとめる予定ですが、都道府県・市区町村では今回の課長会議で示された内容をもとに、第8期計画の策定に向けて準備を進めます。
引用:令和元年度 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議 老健局「総務課」より・ 令和元年度 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議 老健局「総務課」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年3月11日掲載のものです。
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