第193回社保審・介護給付費分科会が11月16日に開かれ、2021年度の介護報酬改定に向けた具体的な論点と対応案が示されました。認知症対応型共同生活介護(以下、グループホーム)に関しては、ユニット数の弾力化やサテライト型事業所の創設に向けた具体的な基準・報酬案、計画作成担当者の配置基準の見直しなどについて議論がなされましたので、本記事でまとめていきます。
グループホームの需要は今後も増大することが見込まれる中、厚労省は①現役世代の減少に伴う担い手不足の懸念、②経営の大規模化を通じた生産性の向上を図ること、といった背景を踏まえ、「ユニット数の弾力化」「サテライト型事業所の創設」の具体案を提示しました。
現行では、地域密着型サービス(定員29人以下)であるグループホームのユニット数(1ユニット定員5人以上9人以下)は1または2とされ、何らかの必要性が認められる場合にのみ3とする事が認められています。
2020年度調査による収支差率を比較すると、1ユニットの事業所は2.7%、2ユニットの事業所は3.3%、3ユニットの事業所は2.9%と、ユニット数が多い方が収支差率は高いという結果となりました。
2ユニットの事業所の12.7%が規模の拡大の必要性を感じているとのアンケート結果もあり、厚労省は、ユニット数について、現行の「共同生活住居(ユニット)の数を1又は2とする。」という基準に対し、「共同生活住居(ユニット)の数を3以下とする。」との弾力化への見直し案を提示しました。
また、地域の実情に応じて複数事業所で人材を有効活用するために、サテライト型事業所の創設に関する具体的な基準・報酬案も併せて示されました。基準等については、サテライト型小多機事業所が参考とされています。
第187回分科会にて検討案の概要が示された際は、サテライト型事業所の創設に慎重な声もありましたが、本分科会では目立った反対意見は聞かれませんでした。
現行では、医療ニーズのある入居者に適切な対応ができる看護体制を整えている事業所について、医療連携体制加算Ⅰ~Ⅲが取得可能です。加算を取得している割合は(Ⅰ)が78.3%であるのに対して、(Ⅱ)は2.1%、(Ⅲ)は2.6%で、(Ⅱ)と(Ⅲ)の算定率が非常に少ない状況です。
取得しない理由・課題として「看護師を常勤換算で1名以上確保できない(72.8%)」に次いで、「算定付きの前12か月間に、喀痰吸引もしくは経鼻胃管や胃瘻等の経腸栄養を実施する入居者がいない」が51.8%を占めています(複数回答)。
医療的ケアが必要な者の受け入れ実績が要件となっている点について、喀痰吸引と経腸栄養への医療的ケアの負担や、その他の医療ニーズのある入居者への対応によって増加する負担に対する評価を適切にした上で、今後の医療ニーズへの対応強化のあり方について、さらに具体的な議論が深められていく見込みです。
グループホームの計画作成担当者は、現在ユニットごとに1人以上配置されることとなっています。しかし、介護支援専門員の採用に苦慮している事業所は約6割を占め、複数ユニットの兼務の必要性を感じている事業所も6割となっています。
こうした現状や限られた人材を事業所全体で有効活用する観点から、計画作成担当者の配置要件を「事業所ごとに1人以上」と緩和する方向性が提示されました。全国老人福祉施設協議会の小泉立志氏はこの対応案に賛同意見を述べており、他の委員からも反対意見が聞かれませんでした。今後の議論の動向に注目していきましょう。
引用:第193回社保審・介護給付費分科会「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の報酬・基準について」より
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。