ケアマネジャーの平均給与など最新状況公表、介護職員との給与差がますます縮小傾向に

2021.06.08
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2021年度介護報酬改定を巡っては、「ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保」を論点として、様々な意見が交わされました。その一方で、介護支援専門員(以下、ケアマネ)の業務負担軽減や処遇状況に関し、現場からは厳しさを訴える声も聞かれます。

こうした背景を踏まえて実施された厚生労働省の調査研究事業の成果として、ケアマネの業務負担等に関する調査研究報告書がこのほど公表されました。

本記事では調査結果のうち、ケアマネの平均給与などの処遇状況について、別調査から明らかになっている他職種の状況と比較検証しながら整理していきます。

ケアマネジャーの平均給与と推移

厚労省が公表した「居宅介護支援事業所における業務負担等に関する調査研究事業」の報告書では、ケアマネの処遇状況等に関する調査結果がまとめられました。調査結果によると、直近のケアマネの平均給与等は以下の通りです。

介護支援専門員(月給・常勤のもの)

◎平均給与額
・2019年2月・・・32万5,230円
・2020年2月・・・33万660円  ※5,430円の増加

◎平均基本給額
・2019年2月・・・21万8,790円
・2020年2月・・・22万1,300円  ※2,510円の増加

◎平均勤続年数
集計対象となったケアマネの平均勤続年数:8.8年

主任介護支援専門員(月給・常勤のもの)

◎平均給与額
・2019年2月・・・35万960円
・2020年2月・・・35万1,480円  ※520円の増加

◎平均勤続年数
集計対象となった主任ケアマネの平均勤続年数:10.6年

関連資料:老人保健事業「居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業報告書」

ケアマネの給与水準に特段の改善は見られず

介護職員の処遇は、12年の介護職員処遇改善加算や19年10月の介護職員等特定処遇加算の創設等、累次の改善策が取られてきました。しかし、居宅介護支援事業所はこうした処遇改善施策の対象に含まれていません。

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出典:厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査結果」より作成

調査時期や対象に違いはありますが、近年の傾向をつかむため、厚労省が毎年発表している「介護従事者処遇状況等調査」の結果から、ケアマネの平均給与の推移を参照してみます。すると、緩やかな上昇は見られるものの、増加し続ける現場の業務負担には見合っていないとの見方もあります。

平均給与を比較:ケアマネと介護職員の給与差縮小の傾向はますます顕著に

ここで、ケアマネと介護職員との平均給与額の推移を比較してみましょう。

介護職員の平均給与額との比較

◎介護職員の平均給与額
(介護従事者処遇状況等調査結果より、特定処遇改善加算(I)~(II)を取得した施設・事業所)
・2019年2月・・・30万7,430円
・2020年2月・・・32万5,550円  ※1万8,120円の増加

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出典:厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査結果」より作成

12年4月の「介護職員処遇改善加算」導入後、介護職員の待遇面は大きく改善されています。それに伴い、相対的に平均給与が高かったケアマネジャーと介護職員との待遇差は年々縮小傾向にあります。

12年当時は5万6,610円の差が見られた2職種間ですが、20年の差額は3万6,960円まで縮小。ケアマネジャーの相対的な待遇の低下が顕著となっています。

勤続年数10年以上の介護福祉士との比較

次に、勤続年数10年以上の介護福祉士(データは介護従事者処遇状況等調査結果から)と主任ケアマネジャー(平均勤続年数10.6年、データは「居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業報告書」より)との直近2年間の平均給与を比較してみましょう。

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出典:老人保健事業「居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業報告書」

及び厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査結果」より抜粋

勤続10年以上の介護福祉士には、特定処遇改善加算等で厚い手当てが支給されています。対象データが異なるため単純比較はできませんが、ほぼ同等の勤続年数を有する主任ケアマネの平均給与が勤続年数10年以上の介護福祉士を下回る結果となりました。

ケアマネ不足に拍車をかけない処遇改善策に期待

介護業界の待遇改善は、深刻な人手不足問題を打開する大きな要素です。しかし、これは介護職員に限ったことではなく、居宅介護支援を含め、介護業界全体で向き合うべき課題でもあります。

まして、主任ケアマネジャーは居宅介護支援事業所の管理者の要件でもある重要な存在。主任ケアマネジャーの担い手の減少は、今後の介護事業展開や運営に大きく影響するでしょう。

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出典:厚生労働省「介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況等」より作成

ケアマネをめぐる状況として、受験資格の厳格化によりケアマネ試験の受験者数が4万人台へと激減しているという事情もあります。ケアマネの資格取得自体が狭き門となり、さらには待遇面でも不安が残る現状では、今後、居宅介護支援の現場での人手不足が深刻化することが懸念されます。

今回の調査結果を踏まえ、ケアマネ不足に拍車をかけない処遇改善策の検討が期待されます。

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