2026年1月開始の介護福祉士国家試験のパート合格とは?【トレンド解説】

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人材不足の対応策として、国は処遇改善や介護人材のすそ野を広げるための支援など様々な取り組みを進めています。

このうち、2026年1月からの導入に向けて準備が進んでいるのが、介護福祉士国家試験の「パート合格」です。主に働きながら資格取得を目指す人の受験ハードルを下げるための取り組みで、受験者数や介護施設や通所介護事業所などで介護福祉士を配置要件とした加算の算定状況に変化があるかどうか今後注目される要素となります。

介護福祉士国家試験のパート合格とは?2026年の試験からの変更点

介護福祉士国家試験の「パート合格」とは、試験を3つのパートに分け、合格水準に達したパートは翌年・翌々年度の受験免除を認める新たな仕組みです。

受験ハードルを下げることで、受験者を増やす方策として2024年に半年間ほど集中的な検討が進められてきました

(【画像】第1回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会資料5より)

初受験時は全員が全パートを受験し、不合格パートは再受験が必須となりますが、既に合格したパートを受験するか否かは受験者が選択することができるようになります。

なお現行の合格基準は、

  • 総得点の6割程度(その年の問題の難易度で合格ラインを補正)
  • 「人間の尊厳と自立、介護の基本」「認知症の理解」などを問う11科目群すべてで得点すること

となっています。

介護福祉士国家試験受験者数の近年の動向と「パート合格」導入の経緯

近年の受験者数と合格者の推移は以下のグラフ通りです。受験者の大半を占める”実務経験ルート”で資格取得するのに実務者研修の修了(450時間)が課された後の2016年(第29回)以降は受験者が大幅に減っています。

また、現在も受験者数は減少傾向で、直近5年間でおよそ1万人減少しました。

なお、介護福祉士の資格登録者数は2025年3月末時点で200万4,027人です。

「パート合格」制度は、こうした状況を踏まえ、資格保有者の質を保ちつつも働きながら資格取得をしやすくするための仕組みとして導入されます。

試験でのパート合格導入後は、全パートを受験した場合は、まず全パートの総得点で合否が判断され、その結果が不合格だった際は、パートごとに合否が判断されることになります。(一部パートのみを受験した場合はパートごとに合否判断)

受験ハードルを下げることに対する懸念点は介護福祉士の専門職としての質が低下する可能性ですが、この合格基準とパート合格の有効期限を設定することで、質も担保できるものと考えられています。

介護福祉士を配置要件とする加算と最近の報酬改定の動向

以下の表は、主要な介護保険サービスについて、介護職員等に対する介護福祉士の割合と介護福祉士の配置などを評価する主な加算を整理したものです。

介護福祉士の受験ハードルの緩和は、これらのサービスへの影響を及ぼす施策といえます。

サービス類型 介護職員や訪問介護員に対する介護福祉士の割合(2023年10月時点) 介護福祉士の配置が評価される主な加算
通所介護 45.7%
  • サービス提供体制強化加算
地域密着型通所介護 38.6%
  • サービス提供体制強化加算
通所リハビリテーション 60.2%
  • サービス提供体制強化加算
訪問介護 49.5%
  • 特定事業所加算(上位区分)
訪問入浴介護 40.0%
  • サービス提供体制強化加算
(地域密着型)特定施設入居者介護 48.6%
  • サービス提供体制強化加算
  • 入居継続支援加算
認知症対応型共同生活介護 46.8%
  • サービス提供体制強化加算
(地域密着型)介護老人福祉施設 61.6%
  • サービス提供体制強化加算
  • 日常生活継続支援加算
介護老人保健施設 65.2%
  • サービス提供体制強化加算
介護医療院 59.7%
  • サービス提供体制強化加算
短期入所生活介護 60.6%
  • サービス提供体制強化加算

2021年度介護報酬改定では、サービスの質向上や職員のキャリアアップ促進といった目的で、このような加算において介護福祉士のより手厚い配置を評価する区分の新設が行われました。

また、介護職員処遇改善加算の上位区分を算定するにはサービス提供体制強化加算、特定事業所加算、入居継続支援加算、日常生活継続支援加算のような介護福祉士の配置要件が定められた区分の加算を算定している必要があります。

各施設や事業所への人材定着を図るための方策として、介護福祉士の配置割合を高めようとする傾向は今後も続きそうなことからも、パート合格の施策によって受験者数の回復が見られるかどうかは注目すべき要素といえます。

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