厚生労働省は9月14日に社会保障審議会 介護給付費分科会をオンラインで開催。2021年度介護報酬改定に向けて「自立支援・重度化防止の推進」について議論しました。科学的介護のテーマでは、2021年度から本格運用が始まるCHASEと、VISITの統合スケジュールや、介護記録ソフトとの連携、ソフト導入の補助金などについて議論が進んでいます。
VISITは通所リハ・訪問リハ事業所の情報を収集したデータベースで、2017年度からスタートしています。一方、CHASEは、すべての介護保険サービスから情報を収集し、高齢者の状態・ケアの内容等を可視化するデータベースで、2021年度から本格的な運用がはじまります。
2021年度に向けて、VISITとCHASEのデータ入力・フィードバック機能を統合し、介護記録ソフトとの連携でデータ入力を省力化するなど、現場の負担を軽減するための準備が進んでいます。また、統合したデータベースシステムに入力することで、データ提出とともに、加算の算定に必要な様式の作成も可能にする方針です。
●VISIT・CHASEの現状と今後のスケジュール(イメージ)
VISITは2017年度に運用がスタートし、2018年度の介護報酬改定では、データの提出を評価するリハマネジメント加算(Ⅳ)が新設されました。しかし、2020年3月末時点でリハマネジメント加算(Ⅳ)の算定率は1%程度と低い状況です。
調査によると、88.3%の事業所が、データ入力の負担が大きいと回答しています。介護記録ソフトからのデータ連携については、76.6%の事業所が活用しておらず、その理由としては「ソフトが連携していない」「連携する操作方法がわからない」などの回答が多くなっています。
VISITのデータ提出状況からみて、現状ではデータベースの構築のために、データ提出を促進していく段階であるという意見が多く集まりました。具体的には下記のような方策があがっています。
●データ提出に対する加算
データ提出が普及するまでは、引き続き加算によって、データ提出自体を評価していくべきという意見が主流です。加算だけでは普及が進まない現状から、現場の負担軽減や入力システムの操作性アップと並行して進みます。
●介護記録ソフトとの連携
日々のケアの記録が自動的にデータベースに入力されるなど、介護記録ソフトとの連携による入力の負担軽減を求める声が多くあがりました。厚生労働省は2021年4月に向けて対応するソフトの拡充を進めています。
●補助金の活用
介護記録ソフトを使用していない事業所に対して、ソフト導入の補助金を充実させる意見もあがりました。全国老人保健施設協会の東委員は、地域医療介護総合確保基金での補助率が2分の1であることに対して、4分の3、5分の4など、補助率を高めてはどうかと提案しています。
●フィードバック機能の充実
フィードバックを活用してはじめて、事業者にとってメリットがあるとして、フィードバック機能の充実を求める意見もあがりました。VISITの調査によると、フィードバック機能を活用している事業所は29.7%に留まっています。活用していない事業所に、これがあれば活用したいと思える分析機能を聞くと、「他の施設の利用者との比較分析」「事業所の他の利用者との比較分析」「時系列分析の拡充」などの回答がありました。
2021年度のCHASEの本格運用に向けて、実効的なデータベースを構築するための方策が進みます。介護記録ソフトのデータ連携といった、現場の負担軽減に直結する内容や、ソフト導入の補助金率のアップなど、気になる議論の動向をチェックしておきましょう。
引用:第185回社保審 介護給付費分科会「令和3年度介護報酬改定に向けて(自立支援・重度化防止の推進)」資料より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年9月18日掲載のものです。
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