2021年度介護報酬改定に向け、10月9日に開かれた社保審・介護給付費分科会にて各サービス種別の論点と方向性が議論されました。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)に関して、今回資料提示された論点は7つ。中でも注目度の高い2点について解説します。
高齢化が進展し、重度介護者や認知症高齢者が増えていく一方で、介護領域の人材不足が叫ばれています。この流れを受け、今後も需要が高まるであろうグループホームに対し、人材の有効活用や経営の大規模化の視点から、下記の2点の対応が検討されました。
・ユニット数の弾力化
・サテライト型事業所の創設
現行では、地域密着型サービス(定員29人以下)であるグループホームのユニット数は1または2とされ、何らかの事情で認められる場合のみ3ユニットと規定されています(1ユニットの定員は5人以上9人以下)。
2017年の介護サービス施設・事業所調査によると、ユニット数は「2ユニット」が60.6%と最多、次いで「1ユニット」が33.6%であり、「3ユニット以上」は全体の5.6%の事業所に留まりました。
また、2ユニットの事業所の12.7%が、規模の拡大の必要性を感じていると回答。サテライト型事業所が必要だと回答した事業所は全体の約2割を占めています。
ユニット数が多いほど収支差率が高い傾向もあり、現状、1または2ユニットが基本となっているユニット数を弾力化する方針が示されました。その場合、基本報酬については、現状「1ユニット」と「2ユニット以上」に分かれているところ、「1ユニット」「2ユニット」「3ユニット以上」と細分化する案になっています。また、人材を有効活用しつつグループホームの供給量を増やすために、サテライト型事業所の創設についても提案されました。
ユニット数の弾力化については目立った反対意見が聞かれなかったのに対し、サテライト型事業所の創設については、経営の安定化を考えた場合に小規模であることから不安があるといった意見がありました。全国老人福祉施設協議会の小泉立志氏は「グループホームのような小規模な事業所でサテライトを実施しても、人材確保やサービスの向上につながらないのでは」と指摘しています。
現行では計画作成担当者をユニットごとに1名配置することになっており、他ユニットとの兼務はできません。この点について、限られた人材を有効活用する観点から、最大3ユニットまで兼務を可能とする方向性が検討されました。
2020年の調査研究事業の速報値によると、介護支援専門員の採用に苦慮しているとの回答が約6割。複数ユニットを兼務する必要性を感じている事業所も約6割を占めています。
最大3ユニットまでの兼務を可能とする方針に対して、委員からは賛成意見が寄せられましたが、健康保険組合連合会の河本滋史氏は「緩和することはいいと思うが、いきなり最大3ユニットにするのではなく、まず2ユニットにして効果検証するなど段階を踏んだ対応が必要では」と提言しました。
そのほか、緊急時の短期利用について、7日間を原則としつつも、14日間を限度に見直すことや、ユニット数に関わらず1事業所1名までという制限を、1ユニット1名までにすることなども検討されています。各論点について、委員からは概ね賛成意見が集まり、これらの方針で議論が進んでいくと思われます。
引用:第187回社保審・介護給付費分科会「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の報酬・基準について(検討の方向性)」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年10月13日掲載のものです。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。