2021年度介護報酬改定に向けた「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令」について、本記事では【通所介護】に関する省令※の改正内容を整理していきます。※省令…指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準。以下「運営基準」とします。記事本文では該当する条項の内容を要約しています。
全てのサービスについて、省令上にて「介護保険等関連情報その他必要な情報を活用し、適切かつ有効に行うよう努めなければならない」という規程が新設されました。具体的には、以下の点が運営基準として求められます。
●LIFEを活用した計画の作成や事業所単位でのPDCA サイクルの推進、ケアの質の向上に努めること
感染症や災害が発生した場合であっても、利用者に必要なサービスが安定的・継続的に提供される体制を構築することが、次期改定の柱の1つです。これを踏まえ、業務継続に向けた以下の3点が義務化される運営基準の改正が実施されます。
●業務継続に向けた計画(業務継続計画・BCP)を策定し、感染症や非常災害発生時には計画に従って必要な措置を講じること
●業務継続計画を職員に周知するとともに、必要な研修や訓練を定期的に実施すること
●定期的に業務継続計画の見直しを実施し、必要に応じて計画内容の変更を行うこと
上記の運営基準の改正に際し、省令施行日から2024年3月31日まで、3年間の経過措置期間を設けるとしています。
現行では、各サービスにおける運営規程等の重要事項は、事業所内の見やすい場所への掲示が義務付けられています。この点について、介護サービス事業者の業務負担軽減や利用者の利便性の向上を図る観点から、閲覧可能なファイル等で据え置くなどの対応が可能となります。
具体的には、重要事項に関する書面を事業所に備え付け、かつ、関係者がいつでも自由に閲覧できる状態とすることで、掲示の代わりとするとしています。
介護福祉現場で問題となっている高齢者への虐待に関して、利用者の人権の擁護や虐待の防止等の観点から、以下の4点が義務付けられます。
●虐待防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果について、職員に周知徹底を図ること。(委員会はテレビ電話など情報通信機器を活用して行うことができる)
●事業所における虐待防止のための指針を整備すること
●職員等に対し、虐待防止のための研修を定期的に実施すること
●上記の虐待防止に関する措置を適切に実施するための担当者を置くこと
虐待防止に関する運営基準の改正に際し、省令施行日から2024年3月31日まで、3年間の経過措置期間が設けられます。
認知症患者が今後さらに増加することを踏まえ、認知症についての理解の下、本人主体の介護を行い、認知症の人の尊厳を守っていくことが求められます。
こうした観点から、介護サービス事業者に対して、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者(無資格者)について、認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることが義務化されます。
介護現場で問題となっている様々なハラスメントへの対策強化が、運営基準に盛り込まれました。通所介護を含めたすべてのサービスを対象に、ハラスメントによって職員の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化など、必要な措置を講じることが義務付けられます(経過措置なし)。
介護サービス事業者の感染症対策を強化する観点から、以下3点の対策が義務化されます。
●感染症の予防・まん延の防止のための対策を検討する委員会をおおむね6月に1回以上開催すること。その結果について、職員等に周知徹底を図ること。(委員会はテレビ電話など情報通信機器を活用して行うことができる)
●事業所における感染症の予防・まん延の防止のための指針を整備すること
●職員等に対し、感染症の予防・まん延の防止のための研修・訓練を定期的に実施すること
なお、経過措置期間は省令施行日から2024年3月31日までの3年間が設けられます。
また、災害への対応においては地域との連携が不可欠という観点から、非常災害対策(計画策定、関係機関との連携体制の確保、避難等訓練の実施等)が求められる各介護サービス事業者を対象に運営基準が改正されます。当該訓練の実施に当たって、地域住民の参加が得られるよう連携に努めなければならない、という点が新たに追加されました(非常災害対策・居宅基準第百三条2)。経過措置はありません。
理学療法士として回復期病院、リハ特化デイ施設長、訪問リハを経験後フリーライターとして独立。医療福祉、在宅起業、取材記事が得意。正確かつ丁寧な情報を発信します。