2021年度の介護報酬改定にて、介護保険施設における事故発生の防止と発生時の適切な対応を推進する観点から、組織的に安全対策を実施する体制が整備されていることを評価する「安全対策体制加算」が新設されました。「安全管理体制未実施減算」もあわせて新設されています。加算の算定要件や関連Q&Aなど、当該加算・減算に関する情報を確認しておきましょう。
介護保険施設では、運営基準(省令)における事故の発生および再発を防止するために講じなければならない措置としてこれまで、①事故発生防止のための指針の整備、②委員会の開催、③従業者に対する研修の定期的な実施、の3点が求められていました。
2021年の介護報酬改定では新たに、「①~③を適切に実施するための担当者の配置」が運営基準に追加となりました。これに伴って新設されたのが、「安全対策体制加算」「安全管理体制未実施減算」です。
「安全対策体制加算」とは、担当者が安全対策に係る外部の研修を受講し、組織的に安全対策を実施する体制を備えている事業所を評価する加算です。また、「安全管理体制未実施減算」とは、運営基準における事故の発生・再発防止のための措置が講じられていない場合に適用される減算措置です。
介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院
安全対策体制加算:20単位(入所時に1回)
安全管理体制未実施減算:5単位/日 ※6か月間の経過措置期間あり
①各サービス種別における運営基準に適合していること。
②規定の担当者が安全対策に係る外部における研修(※1)を受けていること。
③施設内に安全管理部門を設置し、組織的に安全対策を実施する体制(※2)が整備されていること。
※1:「外部の研修」について
介護現場における事故の内容、発生防止の取組、発生時の対応、施設のマネジメント等の内容を含むものとされています。
なお、2021年10月31日までの間にあっては、研修を受講予定(2021年4月以降、受講申込書等を有している場合)であれば、研修を受講した者とみなされます。一方で、2021年10月31日までに研修を受講していない場合には、4月から10月までに算定した加算を遡り返還する必要があります。
※2:「組織的な安全対策の実施」について
施設内において安全管理対策部門を設置し、事故の防止に係る指示や事故が生じた場合の対応について、適切に従業者全員に行き渡るような体制を整備していることが必要です。
運営基準における事故の発生または再発を防止するための措置が講じられていない場合、その翌月から基準に満たない状況が解消された月まで、入所者全員について、所定単位数から減算が適用されます。
安全対策を適切に実施するための担当者は、2021年改正省令の施行の日から起算して6月を経過するまでの間、経過措置として減算は適用されません。
Q.安全対策担当者が安全対策に係る外部における研修を受けていることが要件となっているが、どのような研修を想定しているのか(Vol.2 問39)
A.外部の研修としては、介護現場における事故の内容、発生防止の取組、発生時の対応、施設のマネジメント等の内容を含むものであり、関係団体(公益社団法人全国老人福祉施設協議会、公益社団法人全国老人保健施設協会、一般社団法人日本慢性期医療協会等)等が開催する研修を想定している。
Q.算定要件を満たす施設がサービス提供を行う場合に、入所者につき入所初日に限り算定できるところ、施設が算定要件を満たすに至った場合に、既に入所している入所者に対して算定することは可能か(Vol.2 問40)
A.安全対策体制加算の算定要件を満たしている状態で新たに入所者を受け入れる場合に、入所時に限り算定するものであるため、算定要件を満たした後に新規で受け入れた入所者に対してのみ算定可能である。
Vol.948「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和3年3月23日)」の送付について
介護経営ドットコムの記事を制作・配信している編集部です。日々、介護事業所を経営する皆さんに役立つ情報を収集し、発信しています。