厚生労働省は3月30日、「第6回介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」を開き、取組の進捗と今後のスケジュールを示しました。指定権者や保険者と、介護サービス事業者の双方の負担軽減を目指し、すでに複数の取組がスタートしています。事業所が所在する地域の進捗はどうか、照らし合わせながら確認してみましょう。
3月上旬、厚生労働省は各自治体に具体的な対応を通知し、下記の取組がスタートしています。
●押印が必要な書類の削減。指定申請・報酬請求で押印を求める文書を「指定(更新)申請書」「誓約書」「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」の3つに絞る。押印した文書はPDFデータ等でメール送付することも可能。
●原本証明は原則不要(指定申請・報酬請求時に添付する資格証の写しなど)。
●変更届、更新申請は郵送・電子メールでの提出を原則とし、窓口への持参は不要。
●人員配置の添付資料で、配置基準に該当する資格の資格証の写し以外は添付不要。
● 指定申請で、施設・設備・備品等の写真添付は、自治体が現地を訪問できない場合のみ。
●厚生労働省のホームページからダウンロードできる申請様式を周知。
● 処遇改善加算と特定処遇改善加算の様式を一本化し、様式はExcel形式で提供。指定権者は原則、様式に変更を加えない。
● 実地指導に際し、重複する文書や既提出文書の提出を求めない。
●実地指導のペーパーレス化。画面上で文書を確認する。
実地指導については令和元年12月から令和2年3月にかけて、指導監督等の担当職員に向けた研修が行われました。標準化・効率化の趣旨や意義を理解し、実地指導において実践するための研修で、今後も継続して実施していく予定です。
「従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表」についての簡素化も進みます。各自治体で改変を加えた様式を使用している現状があり、統一に向けて、参考様式が示されました。これに対して、5月末を期限に自治体から意見を集め、見直しを進めます。令和2年度中に様式をまとめて周知する予定です。
令和2年度から3年度を目途に、検討・実施が進んでいく項目を確認しておきましょう。
●変更届の頻度
管理者の変更など人員交代に伴い、頻繁な変更届の提出が必要であったり、類似の文書を重複して提出している現状に対して、提出が必要な項目を精査し、見直ししていきます。
例えば訪問介護の場合、現状では下記の赤字の項目に変更があった場合に、変更届が必要です。
●更新申請時の文書
指定の更新申請時に求められる文書の量について、自治体によって大きな差があり、実態を把握した上で、簡素化している自治体に合わせる方向で見直しが進みます。
●併設事業所や複数指定を受ける場合
文書の重複が負担となっている現状から、下記のような対応を検討していきます。
・同一の事業所で実施している介護サービス/予防サービスで類似の書類を一本化
・介護サービス事業所の指定を受けている事業所の、総合事業の指定申請に関して簡素化
・介護サービスと予防サービスで指定開始日が異なる場合、更新日を近い方に合わせて集約し、更新申請が6年に1度で済むようにする
●指導監査の時期
実地指導の頻度などについて、効率化が図られるように検討が進みます。頻度については、多くした方が対応にも慣れ、また、適正な運用につながるという意見と、過去に指導がない実績が積み重なれば、間隔をあけてもいいのではという意見があり、現時点では方向性が定まっていません。
その他、総合事業の様式例の整備や、効果的に周知するための方法(ガイドライン・ハンドブック等の作成など)が検討されています。
ウェブ入力や電子申請などICT化については、3年以内の取組として設定されており、令和2年度中に方針を固める方向で検討が進んでいきます。文書負担の軽減の議論は、事業所の事務負担に直結する内容ですので、所属する自治体の取組状況など、動向をチェックしておきましょう。
引用:「介護分野の文書に係る負担軽減に関する取組の進捗及び今後の進め方について」より
※本記事は「介護マスト」から移行しており、記事は2020年4月2日掲載のものです。
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