ICT活用で通所介護でも人員配置緩和の検討を―2024年度報酬改定に向けた財政審の検討状況

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財務省は5月11日、2024年度の介護・診療報酬の同時改定に向けて、通所介護を含むサービスを対象にICT機器の活用とそれに伴う人員配置基準の緩和を進めていくことなどを提案しました。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会で示されたものです。

今後10年の介護保険制度改革へ財務省が求める3つの方向性

この日の財政制度等審議会・財政制度分科会では、社会保障費の抑制を主眼に置いた改革や少子化対策について議論されました。改革案を深めていくためのベースとして、財務省から最新のデータや制度の改革案が示されています。

資料には、「2025年までに(社会保障制度の)改革を実施するには、事実上本年が最後のチャンス」であり、介護保険制度やその財源についても、団塊世代の介護需要が急増する10年後までを見越して「3年に1度の制度見直しにおいて、毎回、着実に進める必要」があるとされています。

その上で、介護保険制度改正のタイミングで見直していくべきポイントとして挙げられているのは以下の3つです。

  • ICT化機器の活用による人員配置の効率化
  • 協働化・大規模化による多様な人員配置
  • 給付の効率化(給付範囲の見直し)

このほか、医療分野の改革事項として新型コロナウイルス対策の特例支出(医療機関に支払われていた病床確保料など)の平時への見直しや薬剤費の保険給付範囲の見直しなどがピックアップされています。

ICT機器の活用による人員配置の効率化(介護施設・通所介護等)

ここからは、介護保険制度の改正や報酬改革に向けた検討に絞って紹介します。
まず、ICT機器の活用を通じた業務負担の軽減と人員配置の緩和についてです。

これまでも2024年度介護報酬改定に向けた論点として扱われているテーマで、厚生労働省も実証実験を進めてきました。

今回の財務省の提案では、厚労省の実証実験でも取り入れられていた見守り機器(夜間ケアの効率化に使うもの)や記録業務の効率化を図るスマートフォンのアプリのようなツールを取り上げています。

こうした機器の活用により、人員配置の効率化を進めるべきとするサービスには、介護施設のほかに「通所介護等」を挙げています。

協働化・大規模化による多様な人員配置(社会福祉法人)

介護事業者への効率的な経営を求める切り口として、経営の協働化や大規模化の重要性にも改めて触れられています。

特に、社会福祉法人の経営基盤強化を進める方策として、物資の共同購入や人材の相互交流など法人間の連携を促すデータやメリットが示されています。

介護保険給付範囲の見直し

介護保険制度改正や関連法の改正について議論してきた社会保障審議会・介護保険部会では、2022年度末まとめた提言で以下のような指摘をしていました。

  • 1号保険料負担の在り方の見直しについて、24年度からの第9期介護保険事業(支援)計画に反映するため、早急に結論を得るべき
  • 利用者負担が2割となるラインの見直しについて、第9期介護保険事業(支援)計画に向けて結論を得るべき
  • 介護老人保健施設と介護医療院の多床室室料負担について、在宅との負担の公平性、各施設の機能や利用実態等を踏まえつつ、第9期介護保険事業(支援)計画に向けて結論を得るべき
  • ケアマネジメントへの利用者負担の導入や要介護1・2の人への通所介護・訪問介護の地域支援事業(総合事業)への移行については第10期計画期間(27~29年度)開始までに結論を得るべき

24年度の介護報酬改定に関わるのは多床室の室料負担についてです。

財務省は2024年度から、介護老人保健施設と介護医療院の多床室の室料も利用者負担にするべきとしています。

また、改革やその可否が先送りになった”ケアマネジメントへの利用者負担”は27年度から導入すべきと明記しています。対して、要介護1・2の人への通所介護と訪問介護の市町村事業への移行については、「第10期介護保険事業計画期間に向けて」、「移行を目指し、段階的にでも、生活援助型サービスをはじめ、地域の実情に合わせた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を可能にすべき」と少し弱い表現になっています。

診療報酬への抑制圧力が介護報酬にも影響する可能性も

この日の資料や検討状況を伝える報道などによると、各種コロナ特例によって病院の経営状況が改善したことなどを背景に、診療報酬をプラス改定とすることに対する慎重意見が出ています。

これは、病院の経営状況が改善したことを背景とするものです。

今回、介護報酬全体の抑制を強く求める表現はありませんが、過去の同時報酬改定で介護報酬の改定率の上乗せ分は基本的に診療報酬の上げ幅(薬価の改定率を除いたいわゆる「本体」部分)以下に抑えられています。診療報酬の改定率引き下げを求める向きが強くなれば、介護報酬を巡る検討にも影響する可能性があります。

診療報酬介護報酬改定の同時改定での改定率の推移と比較

診療報酬 介護報酬
2006年度 -3.16%(本体-1.36%

    薬価-1.8%)

-0.5%(2005年10月改定分含めて-2.4%)
2012年度 +0.004%(本体+1.379%

    薬価-1.375%)

+1.2%
2018年度 -1.19%(本体+0.55%

薬価-1.74%)

+0.54%
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