訪問看護師の育成に効果的な管理者との「1on1」―エビデンス・ベースド・ナーシングマネジメントで学ぶ訪問看護ステーション経営のコツ(7)

ホーム ニュース 専門家コラム 訪問看護師の育成に効果的な管理者との「1on1」―エビデンス・ベースド・ナーシングマネジメントで学ぶ訪問看護ステーション経営のコツ(7)

訪問看護師の育成に悩まれる経営者・管理者の方は多いのではないでしょうか。
訪問看護の仕事は利用者の居宅に訪問し、サービスを提供することが基本となります。
そのため、管理者自身が見本となったり、新人スタッフにつきっきりで指導をしたりするのが難しい状況にあります。
またワークライフバランスが重要な今日では、業務後に指導するといったことも現実的ではありません。もしも管理者がスタッフの育成に時間を取るとすれば、利用者宅への訪問が終わって、スタッフが事務所に戻ってくる時間を育成に使うのが現実的です。

このような短時間で効果的にスタッフを育成する方法として、今回は1on1ミーティングをご紹介します。

スタッフは日々仕事をすることで経験を積んでいます。個人差はあるでしょうが、経験から人は学ぶということに皆さんも異論はないでしょう。成人における学びの70%は自分の仕事経験から得ているという米国の研究所の報告もあります。
経営者や管理者が1on1ミーティングを活用してスタッフの成長を支援することができれば、自ステーションのスタッフ育成は大いに進展するでしょう。

1on1ミーティングとは何か

1on1ミーティング(以下、1on1)とは簡単に言うと、「定期的に管理者とスタッフの間で行われる一対一の対話」のことです。この対話の最終目的はスタッフの成長を支援することです。その過程として、管理者はスタッフの仕事の進捗を確認したり、問題解決を支援したりします。

「育成」を目的とした1on1は、古くはインテルの創業者であるアンディ・グローブが著作で紹介しています。近年ではYahooの取り組みが著作として紹介されたことによって、他の企業にも広まっています。

訪問看護ステーションにおいても1on1を導入し、スタッフの育成を進めることは可能です。経営者・管理者の方が効果的に1on1を実施するためのポイントを3つに絞ってご紹介します。

効果的に1on1を実施するための3つのポイント

1on1の定義は、「定期的に管理者とスタッフの間で行われる一対一の対話」でした。これを実践してみようと思い立ったとき、以下のような疑問が生じるのではないでしょうか。

画像

以下、ひとつずつ確認していきます。

(1)「定期的である」、とはどのように考えれば良いのか

まず、「定期的」といっても実施頻度はどのくらいがいいのか?その際の時間はどのくらいがいいのか?といった点で悩まれるのではないでしょうか。

一般的に1on1の実施頻度や時間は週1回30分程度と言われていますが、お勧めするのは、スタッフの訪問看護師としての能力と担当している利用者の状況から判断することです。当然、スタッフの職務または特定の課題に対する習熟度が高くになるにつれ、1on1の開催頻度や長さを調整することが管理者には求められます。

例えば訪問看護の経験がまだ浅い新人スタッフなら1on1の頻度を増やし、時間も長めにとる必要があるでしょう。

忙しい業務の中で1on1を継続していくには、スタッフとの1on1の終わりに次の日程を決めることをおすすめします。

(2)「管理者とスタッフとの間で行われる」、とはどのように考えればよいのか

いざ1on1の時間をとっても、何を話せば良いのかわからない方もいらっしゃるでしょう。貴重な時間を無駄にはしたくありません。また、管理者が一方的に話してしまうことも避けなければなりません。

1on1の目的は、スタッフの抱える問題の解決です。スタッフの評価ではありません。スタッフが自身の問題を解決することは、そのステーションの問題を解決することでもあります。1on1はスタッフのための時間としてください。

「スタッフである訪問看護師の成長のプロセスを支援する」という立場に管理者が立つことが大切です。

(3)「一対一の対話」、とはどのように考えればよいのか

1on1とはスタッフの抱える問題の解決とそれに向けたスタッフの成長のために行います。これを念頭に置き、経営者・管理者の方は、次の3つのステップを毎回行うことを意識してください。

信頼関係を構築する→ 学びを深化させる→次の行動の決定をうながす

まず、1on1を行う前提として、前回前々回とご紹介した心理的安全性という「対人関係のリスクを取っても安全だと信じられる職場環境」がなければスタッフは自らが抱えている問題を管理者に伝えることができません。

次に、学びの深化については、スタッフが自力で答えを見つけるためにサポートし(コーチング)、スタッフの知らない知識や技術を教え(ティーチング)、耳の痛いことをスタッフにしっかり伝えて彼らの成長を立て直す(フィードバック)ことによって行います。

そして、1on1の終わりには必ず、スタッフ自身にこれからの行動をどうするか自己決定をうながしてください。次回の1on1は行動すると決めたことが実際にどうなっているか確認することから始めることがいいでしょう。

このような働きかけを経営者や管理者の方が1on1で行うことで、スタッフの成長を支援することができます。

次回は、1on1を効果的に実施するにはどうすれば良いか具体的な事例を3つのステップに沿って解説します。

参考文献

アンドリュー・S・グローブ著、小林薫訳(2017)『HIGH OUTPUT MANAGEMENT-人を育て、成果を最大にするマネジメント』,日経BP社
本間浩輔(2017)『ヤフーの1on1−部下を成長させるコミュニケーションの技法』,ダイヤモンド社
松尾睦(2011)『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』,ダイヤモンド社
松尾睦(2015)『「経験学習」ケーススタディ』,ダイヤモンド社

中原淳(2017)『はじめてのリーダーのための実践!フィードバック』,株式会社PHP研究所
関連記事
岡本貴博
2025.03.31
インクルーシブ教育の推進と放課後等デイサービス事業環境の今後 ―自校通級の拡充から考える
#放デイ・児発 #起業・開業/事業拡大
杉山晃浩
2025.02.22
処遇改善加算の新たな算定要件!機能する業務改善のため委員会・チームづくりのステップとポイント
#人材採用/定着 #サービス共通 #サービス品質向上
片山海斗
2025.02.21
運営指導の“あるある”解説 〜200社以上の支援実績から見えた指摘を受けやすいポイントと対策
#サービス共通 #リスク管理 #運営指導(実地指導)