訪問看護師の育成に悩まれる経営者・管理者の方は多いのではないでしょうか。 訪問看護の仕事は利用者の居宅に訪問し、サービスを提供することが基本となります。そのため、管理者自身が見本となったり、新人スタッフにつきっきりで指導をしたりするのが難しい状況にあります。またワークライフバランスが重要な今日では、業務後に指導するといったことも現実的ではありません。もしも管理者がスタッフの育成に時間を取るとすれば、利用者宅への訪問が終わって、スタッフが事務所に戻ってくる時間を育成に使うのが現実的です。
このような短時間で効果的にスタッフを育成する方法として、今回は1on1ミーティングをご紹介します。
1on1ミーティング(以下、1on1)とは簡単に言うと、「定期的に管理者とスタッフの間で行われる一対一の対話」のことです。この対話の最終目的はスタッフの成長を支援することです。その過程として、管理者はスタッフの仕事の進捗を確認したり、問題解決を支援したりします。
「育成」を目的とした1on1は、古くはインテルの創業者であるアンディ・グローブが著作で紹介しています。近年ではYahooの取り組みが著作として紹介されたことによって、他の企業にも広まっています。
訪問看護ステーションにおいても1on1を導入し、スタッフの育成を進めることは可能です。経営者・管理者の方が効果的に1on1を実施するためのポイントを3つに絞ってご紹介します。
1on1の定義は、「定期的に管理者とスタッフの間で行われる一対一の対話」でした。これを実践してみようと思い立ったとき、以下のような疑問が生じるのではないでしょうか。
以下、ひとつずつ確認していきます。
まず、「定期的」といっても実施頻度はどのくらいがいいのか?その際の時間はどのくらいがいいのか?といった点で悩まれるのではないでしょうか。
一般的に1on1の実施頻度や時間は週1回30分程度と言われていますが、お勧めするのは、スタッフの訪問看護師としての能力と担当している利用者の状況から判断することです。当然、スタッフの職務または特定の課題に対する習熟度が高くになるにつれ、1on1の開催頻度や長さを調整することが管理者には求められます。
例えば訪問看護の経験がまだ浅い新人スタッフなら1on1の頻度を増やし、時間も長めにとる必要があるでしょう。
忙しい業務の中で1on1を継続していくには、スタッフとの1on1の終わりに次の日程を決めることをおすすめします。
いざ1on1の時間をとっても、何を話せば良いのかわからない方もいらっしゃるでしょう。貴重な時間を無駄にはしたくありません。また、管理者が一方的に話してしまうことも避けなければなりません。
1on1の目的は、スタッフの抱える問題の解決です。スタッフの評価ではありません。スタッフが自身の問題を解決することは、そのステーションの問題を解決することでもあります。1on1はスタッフのための時間としてください。
「スタッフである訪問看護師の成長のプロセスを支援する」という立場に管理者が立つことが大切です。
1on1とはスタッフの抱える問題の解決とそれに向けたスタッフの成長のために行います。これを念頭に置き、経営者・管理者の方は、次の3つのステップを毎回行うことを意識してください。
信頼関係を構築する→ 学びを深化させる→次の行動の決定をうながす
まず、1on1を行う前提として、前回、前々回とご紹介した心理的安全性という「対人関係のリスクを取っても安全だと信じられる職場環境」がなければスタッフは自らが抱えている問題を管理者に伝えることができません。
次に、学びの深化については、スタッフが自力で答えを見つけるためにサポートし(コーチング)、スタッフの知らない知識や技術を教え(ティーチング)、耳の痛いことをスタッフにしっかり伝えて彼らの成長を立て直す(フィードバック)ことによって行います。
そして、1on1の終わりには必ず、スタッフ自身にこれからの行動をどうするか自己決定をうながしてください。次回の1on1は行動すると決めたことが実際にどうなっているか確認することから始めることがいいでしょう。
このような働きかけを経営者や管理者の方が1on1で行うことで、スタッフの成長を支援することができます。
次回は、1on1を効果的に実施するにはどうすれば良いか具体的な事例を3つのステップに沿って解説します。
アンドリュー・S・グローブ著、小林薫訳(2017)『HIGH OUTPUT MANAGEMENT-人を育て、成果を最大にするマネジメント』,日経BP社 本間浩輔(2017)『ヤフーの1on1−部下を成長させるコミュニケーションの技法』,ダイヤモンド社 松尾睦(2011)『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』,ダイヤモンド社 松尾睦(2015)『「経験学習」ケーススタディ』,ダイヤモンド社
(つるがやまさこ)合同会社manabico代表。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。看護師、保健師、MBA。大学病院(精神科)、訪問看護、事業会社での人事を経験後、株式会社やさしい手看護部長として訪問看護事業の拡大に寄与。看護師250人超の面談を実施し、看護師採用・看護師研修等の仕組みづくりをする。看護師が働きやすい職場環境作りの支援を目指し合同会社manabicoを立ち上げる。 【合同会社manabico HP】https://manabico.com※プロフィールは記事配信当時の情報です